「糖尿病のリスクがある場合、果物や100%果汁のジュースは大丈夫でしょうか?」と聞かれたので調べてみました。
果物でビタミン補給 食物繊維、ポリフェノールも豊富
以下は、記事の抜粋です。
果物にはビタミンやミネラル、食物繊維、抗酸化物質など、体にとって好ましい栄養成分も多く含まれるが、糖尿病患者には注意が必要な食品。
最近の果物は糖分が多いものがあり、また、フルーツジュースやドライフルーツといった加工品は糖分が添加されていたり、加工の過程でビタミンや食物繊維が失われている場合もある。皮まで食べる、糖分が多く甘い果物を避けるなどの工夫をして、果物を上手に食事にとりいれたい。
果物は体に良い―栄養機能
1)ビタミンやミネラルが豊富:果物にはビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンB群が多く含まれる。また、ナトリウムの排出を促すカリウムが含まれる。腎臓病の治療を受けておりカリウム制限をしていなければ、メリットの多い食品だ。
2)食物繊維:果物にはペクチンやセルロースなどの食物繊維も含まれる。ただし、果物の食物繊維は皮の部分に特に多く含まれる。果物の皮を棄ててしまうと大切な食物繊維も失うことになるので、なるべく皮ごと食べたい。
3)ポリフェノール類:果物には、ポリフェノール類も豊富に含まれる。ポリフェノール類は果物の色素や苦み、渋みの成分で、フラボノイド類、カテキン類などがよく知られている。果物のポリフェノール類も皮に多く含まれる。
4)果物に含まれる糖分:果物に含まれる糖分は、主に果糖、ショ糖(砂糖)、ブドウ糖の3種類がある。二糖類であるショ糖は、消化器官で単糖類に分解された後にエネルギーとして利用される。果実の甘味の強さをあらわす甘味度は果糖がショ糖の1.1~1.7倍高い。ブドウ糖の甘味度はショ糖の0.64~0.74倍。ミカン、バナナ、モモなどではショ糖が多く、ウメ、キウイフルーツなどではブドウ糖が多く、ナシ、リンゴなどでは果糖が多い。ブドウなどでは果糖とブドウ糖とがほぼ同じくらい含まれる。
フルーツジュースは注意が必要
「糖尿病からみるとフルーツジュースは注意が必要」という研究結果が米国で発表されている。野菜や果物を十分にとっている人では2型糖尿病の発症が減る傾向があるが、フルーツジュースであるとむしろ発症が増えるという。
この研究は、野菜や果物の摂取と2型糖尿病の発症リスクとの関連について調べたもので、米国で実施された”Nurses’ Health Study”に参加した女性を対象に、アンケート調査で、野菜と果物の摂取、緑色葉物野菜と果物の摂取、フルーツジュース摂取との関係について調査した。心疾患、がん、糖尿病と診断されたことのない7万1346名の看護師を対象に、1984年から18年間にわたり調査を実施した。
その結果、緑色葉物野菜や果物をよくとっている人では、2型糖尿病の発症が少ない傾向があることが分かった。一方で、フルーツジュースをよく飲む人では糖尿病の発症が増える傾向が示された。オレンジジュースを1日1杯以上飲む人では、1杯未満の人に比べ発症リスクは1.24倍になった。
海外では100%果汁のフルーツジュースであっても、生の果物に比べ加工の過程で食物繊維やビタミンなどが失われていたり、ブドウ糖や果糖などが添加されている場合も多いことが指摘されている。
まとめ
糖尿病の食事療法では、新鮮な果物を1日80kcalとることが勧められている。80kcalは例えばミカンでは中2個ぐらい(270g)が目安になる。なるべくフルーツジュースやジャム、ドライフルーツ、缶詰のような加工品を避け、果物を皮まで食べる、糖分が多く甘い果物を避けるなどの工夫をして、上手に食生活にとりいれたい。
後半の記事で引用されている論文は、”Intake of Fruit, Vegetables, and Fruit Juices and Risk of Diabetes in Women”です(論文をみる)。
上記のように、固形の果物に比べてたとえ100%天然果汁であっても液体ジュースが良くない理由は、加工の過程で食物繊維やビタミンなどが失われていたり、ブドウ糖や果糖などが添加されている場合も多いことが考えられます。
その他にも、液体なので消化吸収が速く血糖値を急激に高めることもあると思います。一方、植物繊維を多く含む果物は糖分の吸収を抑制します。やはり、面倒でも果物そのものを食べるようにした方が良さそうです。
また、リンゴなどの果物に多く含まれる果糖は、10%がブドウ糖に変換され吸収されますが、残りの90%は、果糖のまま吸収され、主に肝臓で直接代謝されます。果糖を摂取しても血糖値(ブドウ糖値)が上がらないのはこのためです。インスリンの分泌もほとんど促しません。
これだけをみると、果糖をいくら多く摂っても糖尿病には問題なさそうですが、過剰に摂取すると、脂肪酸合成が促進されて、中性脂肪の合成が亢進し、高中性脂肪血症や肥満になります。つまり、果糖を多く含む果物は、ブドウ糖に変換されるデンプンを多く含むパンや米よりも血糖は上げませんが、多く摂ればやはり太ります。
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