「イベルメクチン」はマラリアを20%も減らす

血を吸った蚊が死ぬようになる薬品「イベルメクチン」はマラリアを20%も減らす
大村先生とMSDが創ったイベルメクチンは、線虫の寄生によるアフリカの風土病の特効薬として3億人を救ったこと、イヌのフィラリア症の特効薬でもあること、大村先生がノーベル医学生理学賞を受賞した理由の1つであることなどは知っていましたが、イベルメクチンを服用しているヒトの血を吸った蚊が死ぬことは知りませんでした。以下は、記事の抜粋です。


「イベルメクチン」を使用した薬を服用した人の血液は蚊にとっての致命的な毒となり、蚊が媒介して年間50万人以上もの犠牲者を出しているというマラリアを20%も抑制できたとのこと。イベルメクチンの摂取による人への致命的な副作用はほぼ見られず、マラリア対策に大きな効力を発揮することになるかもしれません。

イベルメクチンは、失明を引き起こす「オンコセルカ症」や慢性的な炎症や腫れを引き起こす「リンパ系フィラリア症」などの原因になる寄生虫や、身近なところでは疥癬を引き起こすダニを殺すだけでなく、服用すると人間の血液が蚊に対する毒性を持ち、血を吸った蚊が死ぬようになる効果があることが知られています。

マラリアに対しては、今回の実験が初の大規模実験になります。今回の実験は西アフリカのブルキナファソの8つの村で行われました。

対象となったのは8つの村に住む、590人の子どもを含む合計2700人。半数には3週間に1度イベルメクチンを投与し、対照群としてもう半数にはイベルメクチンを投与せず、18週間経過を観察しました。それぞれの群でマラリアの診断や血液検査を行ったところ、イベルメクチンを投与されなかった子どもは実験期間中に平均2.49回マラリアに感染していたのに対し、イベルメクチンを投与された子どもの感染回数は平均2回で、イベルメクチンによりマラリア感染数が約20%抑え込まれたことがわかりました。また、この実験を通したイベルメクチンの投与で、害のある副作用は見られなかったとのこと。


元論文のタイトルは、”Efficacy and risk of harms of repeat ivermectin mass drug administrations for control of malaria (RIMDAMAL): a cluster-randomised trial”です(論文をみる)。

マラリア原虫による感染症は、熱帯地方の公衆衛生状況の改善により、かなり減少しましたが、アフリカ大陸のサハラ砂漠より南の地域では依然として多くの患者が報告されています。さらに、マラリア以外にもデング熱やチクングニヤ熱などの病気は蚊によって媒介されるので、これらの病気や他の昆虫媒介感染症に対する効果も期待したいと思います。

イベルメクチンは、無脊椎動物の神経・筋細胞に存在するグルタミン酸作動性Cl−チャンネルに選択的かつ高い親和性を持って結合し、不可逆的に活性化することで、線虫や昆虫などの無脊椎動物を殺します。このグルタミン酸作動性Cl−チャンネルがヒトやイヌなどの哺乳類には存在しないことが、薬理学的メカニズムです。

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