活動性SLE患者に対するBelimumabの有効性と安全性:第3相無作為化プラセボ対照臨床試験

Efficacy and safety of belimumab in patients with active systemic lupus erythematosus: a randomised, placebo-controlled, phase 3 trial

以下は、論文要約の抜粋です。


背景:Systemic lupus erythematosus(SLE)は、B細胞の過活動、自己抗体、B細胞刺激因子(B-lymphocyte stimulator, BLyS)の増加などを伴う多様な自己免疫疾患である。本研究では、活動型のSLEに対するbelimumab (BLyS特異的阻害完全ヒト化モノクローナル抗体)の効果と安全性を調べた。

方法:ラテンアメリカ、アジア-太平洋、東ヨーロッパなどの多施設において、18歳以上の血清学的に確定診断された活動性のSLE患者を対象とした。患者は無作為にbelimumab 1mg/kg, 10mg/kg, プラセボの3群に分けられ、第0日、14日、28日、その後は28日ごとに48週まで、薬物を1時間の点滴静注で投与した。主要有効エンドポイントは、第52週におけるSLE反応係数(SRI)により判定した。

結果:867例の患者をbelimumab 1mg/kg (n=289), 10mg/kg (n=290), あるいはプラセボ (n=288)の3群に無作為に分けた。belimumab群において、SRI係数、抗炎症効果、抗dsDNA抗体の減少などの血清学的改善、ステロイド節約効果などが有意に高かった。有害事象は、belimumab群とプラセボ群との間に差はなかった。

解釈:Belimumabは、SLEに対する最初の特異的分子標的治療になる可能性があり、この重要で典型的な自己免疫疾患に対する新しい治療オプションが可能になるかもしれない。


これは、2009年7月22日の関連記事とほぼ同じ内容です。患者の数が少し違いますが、おそらく同じ臨床試験の結果が論文として発表されたものだと思います。

高ガンマグロブリン血症を示していた患者にbelimumabを投与すると、ガンマグロブリン値が正常化したことは、BLySを阻害することで自己抗体産生B細胞をアポトーシスさせるというbelimumabの作用メカニズムと一致していると論文に書かれています。そのとおりだと思います。

これらの結果は、少なくともB細胞が活性化されているSLEの一部は、BLySの阻害によってかなり改善されることを示しています。BLySは近年注目されるTNFスーパーファミリーに属する分子で、BLySの活性化シグナルは主にBAFF-Rとよばれる受容体で伝達されることがわかっています。TNFαシグナル系のように、抗体医薬に加えて可溶性受容体などの分子標的薬、さらには、低分子量受容体阻害薬などが登場してくるかもしれません。

以前にも書きましたが、私が学部学生時代、臨床配属実習で最初に担当したのがSLEの患者さんでした。当時はステロイドと非特異的な免疫抑制薬以外に有効な治療法がなかったことを記憶しています。その時から今までSLEに対する新薬は1つも出なかったと言われています。BLySを分子標的とした治療が発展し、SLEで悩む多くの患者さんが救われることを祈っています。

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