【海外製薬大手10年度決算出揃う】米市場低迷を新興国でカバー‐医療改革と特許切れ響く
以下は、記事の抜粋です。
海外大手製薬企業の2010年度決算が出揃った。米国勢・欧州勢の各社は、主力品の特許切れや価格低下の影響を受けたが、買収効果や後発品事業、ワクチン事業などの多角化効果によって、概ね好業績を確保した。
特に医療制度改革で低迷した米国市場の落ち込みを、新興国市場の高成長でカバーする構図が鮮明となり、大型製品の特許切れが本格化する今後、ますます新興国市場の取り込みが大きな鍵となってきそうだ。
以下にまとめてみました。
企業 | 売上高 億ドル(%増減) |
主力商品名、その他 (売上高、%増減、属性or適応) |
ファイザー | 678(36%↑) | リピトール(107、6%↓、高脂血症) プレベナー13&7(37、小児用ワクチン) エンブレル(33、抗リウマチ) リリカ(31、8%↑、線維筋痛症) |
ノバルティス | 506(14%↑) | ディオバン(61、1%↑、ARB) グリベック(43、8%↑、慢性骨髄性白血病) ゾメタ(15、3%↑、ビスホスホネート) ルセンティス(15、24%↑、加齢黄斑変性症) フェマーラ(14、9%↑、アロマターゼ阻害剤) バイオシミラー(85、14%↑) ワクチン・診断技術関連(29、25%↑) |
ロシュ | 496(3%↓) | アバスチン(67、9%↑、血管新生阻害) マブセラ/リツキサン(66、9%↑、悪性リンパ腫) ハーセプチン(57、7%↑、転移性乳癌) タミフル(9、73%↓、インフルエンザ) |
メルク | 460(68%↑) | シングレア(50、7%↑、アレルギー) レミケード(27、17%↑、抗リウマチ) ジャヌビア(24、24%↑、糖尿病) ゼチーア(23、2%↑、高脂血症) アイセントレス(11、45%、抗HIV) |
グラクソ・ スミスクライン |
457(1%↓) | セレタイド/アドエア(83、2%↑、気管支喘息) アバンディア(7、44%↓、糖尿病) バルトレックス(9、60%↓、抗ヘルペスウイルス) ワクチン(70、15%↑) |
サノフィ・ アベンティス |
412(4%↑) | ランタス(48、9%↑、持効型インスリン製剤) ロベノックス(38、11%↓、抗血小板) プラビックス(28、25%↓、抗血小板) アピドラ(16、24%↑、超速効型インスリンアナログ) |
アストラゼネカ | 333(→) | クレストール(57、24%↑、高脂血症) ネキシム(50、→、抗潰瘍薬) セロクエル(53、9%↑、抗精神病) シムビコート(27、20%↑、喘息治療配合剤) |
イーライリリー | 231(6%↑) | ジプレキサ(50、2%↑、抗精神病) サインバルタ(35、13%↑、うつ病・末梢神経障害) アリムタ(22、29%↑、抗癌剤) ヒューマログ(21、5%↑、糖尿病) シアリス(17、9%↑、ED治療薬) |
J&J | 224(1%↓) | レミケード(46、7%↑、抗リウマチ) リスパダールコンスタ(15、5%↑) ベルケード(11、16%↑、多発性骨髄腫) プリジスタ(9、45%↑、抗HIV) リスパダール(41%↓) トパマックス(53%↓) |
ブリストル・ マイヤーズ・ スクイブ |
195(4%↑) | アビリファイ(26、1%↓、抗精神病) プラビックス(67、8%↑、抗血小板薬 レイアタッツ(15、6%↑、抗HIV) バラクルード(9、27%↑、B型肝炎) |
この報道だけに基づいて計算すると、昨年の売り上げ1位の薬は、107億ドルのリピトール(一般名:アトルバスタチン)、2位は95億ドルのプラビックス(一般名:クロピドクレル)、3位は83億ドルのセレタイド/アドエア(長時間作用性β2刺激薬サルメテロールと吸入ステロイド剤フルチカゾンの合剤)です。
一方、昨年1番の売り上げの伸びを示したのは抗HIV薬です。アイセントレス(一般名:ラルテグラビル)は、HIV遺伝子にコードされたウイルス複製に必要な酵素、HIVインテグラーゼを阻害します。これにより、HIV感染初期において、HIVゲノムの宿主細胞ゲノムへの共有結合的挿入又は組込みが阻害されます。プリジスタ(一般名:ダルナビル)は、HIV-1プロテアーゼの2量体化及び酵素活性を阻害し、感染性を有する成熟ウイルスの形成を抑制します。多様な作用機序の薬物が登場し、エイズと戦う体制が整ってきたように思います。
また、この表をみて思うのは、単価の高い薬物が売り上げに貢献しているということです。必ずしも病気の頻度とは相関していません。
特に生物学的製剤は高価で、レミケード100mg(一般名:インフリキシマブ、抗ヒトTNFαモノクローナル抗体)は1回分10万円、エンブレル25mg(一般名:エタネルセプト、可溶性TNF受容体)は1回分1.6万円、ヒューミラ(一般名:アダリムマブ、抗ヒトTNFαモノクローナル抗体)40mgは1回分7.1万円です。
このあたりをもっと安くというのが今後の強いニーズですが、ノバルティスのジェネリック部門であるサンドが、バイオシミラーに参入し、2桁成長して85億ドル売り上げた見通しの良さには感心しました。ワクチンの売り上げも伸びています。ワクチンは、昨年不振だったタミフル(一般名:オセルタミビル)などと異なり、流行に左右されない需要があるのが魅力だと思います。
最近、薬理学の定期試験があったのですが、フルチカゾンの名前を記憶している学生が非常に少ないのに驚きました。売り上げからみても、最近の喘息治療では最も重要な薬です。売り上げランキングと教科書との解離はかなりなものです。
コメント