FDAが結節性硬化症に対するエベロリムスの小児用分散錠を承認

FDAが結節性硬化症に対するエベロリムスの小児用分散錠を承認

以下は、記事の抜粋です。


FDAは8月29日、結節性硬化症(TSC)に伴って発生する上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)の治療薬として、エベロリムスの小児用製剤「アフィニトール小児用分散錠」(2mg、3mg、5mg)を承認したと発表した。

TSCは希少な遺伝性疾患で、脳や腎臓などの重要な臓器に腫瘍が発生する。SEGAは緩徐に増殖し、脳脊髄液の流れを遮断することで致命的な合併症を引き起こす可能性がある。TSCは小児の6%、若年成人の9%に認められる。

エベロリムスは、TSC患者に発生するSEGAの発生や増殖に重要な役割を担うmTORキナーゼの活性を阻害する。同分散錠が推奨されるのは、TSCに伴うSEGAと診断され、手術では治療できない1歳以上の小児。


結節性硬化症(Tuberous sclerosis、TS)は、全身の過誤腫を特徴とする全身性疾患で、知能低下、癲癇発作及び顔面の血管線維腫を三主徴とする常染色体優性遺伝を示す病気です。しかし、これら三主徴は必ずしも高頻度あるいは特異的なものではなく、これら三主徴以外にも皮膚、中枢神経系等ほぼ全身に種々の過誤腫を形成し、皮膚においても、白斑等種々の変化に富んだ病変が認められるそうです。

TSの原因遺伝子として、1993年にTSC2遺伝子が、1997年にTSC1の遺伝子が相次いで同定されました。これらは、まったく異なる遺伝子ですが、臨床的にTSC1あるいはTSC2の変異による病態を区別することはできないそうです。

TSC1の遺伝子は130KDaのハマルチン(Hamartin)とよばれるタンパク質を、TSC2の遺伝子は198kDaのチュベリン(Tuberin)とよばれるRab GAP(GTPase activating protein)の触媒部位と相同性を持つタンパク質をコードしています。

TSC1/TSC2複合体は、低分子量GTP結合タンパク質であるRheb (Ras homolog enriched in brain)のGAPとして作用し、Rheb-GTPを不活性化します。Rhebは、その下流にあるmTOR(mammalian target of rapamycin)というタンパク質リン酸化酵素を中心としたmTORC1複合体を活性化することにより、mTORC1の下流にあるS6K1, ribosomal protein S6や4E-BPなどを介して細胞の増殖やアミノ酸代謝などの多様な細胞現象を制御しています。

TS患者の体細胞では、それぞれの相同染色体の一本の染色体上のTSC1 TSC2遺伝子に変異がおこっており、残りのもう一本の染色体上の遺伝子にも変異がおこることで腫瘍病変などが出現すると考えられています。このような変異によりTSC1/TSC2複合体のGAP活性が低下した結果、mTORC1活性が異常に高くなることが病気の本態ではないかと考えられています。

そのため、mTORC1阻害薬であるラパマイシンやエベロリムスがTSの治療に用いられています。これらの薬物については関連記事をご覧ください。

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