ヘビが赤外線を「感じる」メカニズムが明らかに

ヘビが赤外線を「感じる」メカニズムが明らかに、米研究

以下は、記事の抜粋です。


ヘビが暗闇の中で遠くのネズミの発するわずかな体温を正確に察知するメカニズムが初めて解明された。ガラガラヘビ、ボア、ニシキヘビなどのヘビには、目と鼻の間に「ピット器官」と呼ばれる器官があり、この器官が周囲の微弱な赤外線放射、つまり熱を感知することができることは、数十年前から知られていた。

ピット器官を持つヘビの中でも、メキシコ北部と米国南西部に生息するニシダイヤガラガラヘビ(Crotalus atrox)は非常に高い能力を備えており、ほかのヘビと比較して10倍以上の熱感知能力がある。ニシダイヤガラガラヘビは、目を覆われていても獲物を狙って追跡し、捕食することができる。

しかし、これまで、これらのヘビが熱を感知して神経信号に変換する方法は謎とされ、多くの議論が交わされてきた。

UCSFのDavid Julius氏らの研究チームは、視覚とは異なった神経経路にもとづいてヘビが「第6感」を働かせていることをつきとめた。

赤外線がくぼみ状のピット器官内に入り込むと、ピット器官の中にある、非常に薄い皮膜の温度が上がる。ピット器官は空洞のくぼみなので、温度変化に極めて敏感なのだという。この熱の変化が神経系に信号を発信し、ある特定の受容体を活性化させるのだ。

この熱感知に関与する神経経路は、視覚よりも触覚に近いもので、発見された分子は、ほ乳類が痛みを感知する受容体と同系統のものだった。


元論文のタイトルは、”Molecular basis of infrared detection by snakes.”です(論文の要約をみる)。

研究者らは、トランスクリプトーム解析を行い、ガラガラ蛇のピット器官を支配する三叉神経細胞に特異的に多く発現する遺伝子として、TRPA1を同定しました。

TRPA1は、transient receptor potential protein (TRP)スーパーファミリーの中、N末端にアンキリンリピートを持つTRPAサブファミリーに属します。同様の構造を持つTRPA1は、非脊椎動物やヒトを含む脊椎動物に広く分布し、17度以下の低温、ワサビやマスタードの成分で活性化することが知られていました。一般にTRPスーパーファミリータンパク質は、6回膜貫通型のCa2+チャネルとして機能すると考えられています。

研究者らは、いろいろな実験的証拠から、ガラガラ蛇のTRPA1分子が赤外線センサーであることを証明しました。ガラガラ蛇のTRPA1は、これまで発見されたTRPA1と構造的には似ていますが、28度以上という比較的低い熱で活性化される特異的な性質を持つことが明らかになりました。

ピット器官は赤外線を効率よく熱に変換し、この熱を三叉神経終末に多く存在するTPRA1がカルシウム流入→電気信号に変換するようです。このように、ガラガラ蛇の赤外線受容器は、視物質(オプシン)のように光子(フォトン)を受容するのではなく、赤外線によって2次的に生じた熱を感知するものでした。

赤矢印がピット器官、黒矢印が鼻の穴(画像をクリックすると拡大します)

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