今井雅之氏が適切な緩和ケアを受けられていなかった可能性について

今井雅之さんの訃報報道が生みかねない誤解
今井雅之氏の緩和ケアについての廣橋猛氏の記事を紹介します。


今井さんは、大腸癌のステージ4で闘病していることを表明した記者会見で、「夜中にこんな痛みと闘うのはつらい」「モルヒネで殺してくれと言いました、安楽死ですね」といった趣旨の発言をされました。この発言にはいくつかの誤解を招きかねない要素が含まれています。

まず、夜中に眠れないくらいの痛みが生じる状態というのは、適切な緩和ケアを受けられていないことが示唆されます。癌の痛みで眠れないというのは、全く疼痛緩和が図られていない状態であり、必要な鎮痛薬を使用されていないのではないかと感じました。

本来、医療用麻薬を含めた適切な鎮痛薬を用いることで、癌の痛みは確実に緩和されます。緩和ケアは癌治療中であっても必要であり、少なくとも夜に眠れないくらいの痛みを容認していたとすれば問題です。

次に、モルヒネは命を縮める薬ではなく、苦痛を和らげる薬です。適切に使用することで、確実に苦痛を和らげ、生活の質を高めます。末期癌で亡くなる間際の苦痛もまた、しっかりとした緩和ケアを受けることで確実に緩和されます。果たして、必要量のモルヒネを用いていたのか、仮に医療用麻薬だけで緩和困難な痛みだったとしても、鎮痛補助薬を用いていたのかと疑問に感じました。

また、医療用麻薬などでは取り切れない、終末期の耐え難い苦痛に対しては、鎮静という手段もあったはずです。しかし今回の報道では、癌終末期は強い苦痛に耐えるのが当たり前で、まるで苦しみに耐え抜いたことを称えるような論調のものが多く見受けられました。そして、適切な緩和ケアが受けられなかったのではないか、という報道はまるで皆無でした。

今井さんが強い痛みや苦痛に対する適切な緩和がなされずに、苦しんで亡くなられたのだとしたら、残念でなりません。痛みは確実に緩和しなければなりません。それを怠るのは医師の怠慢であり、実力不足です。


確かに「4月30日には記者会見で、末期のステージIVであることを公表。『病には勝てなかった』と声を絞り出した。昨年11月に腫瘍を切除。転院を繰り返し、当時は6つ目の病院だった。抗がん剤の副作用で苦しい日々が続き、担当医に『モルヒネで殺してくれ』と懇願したことも明かした。」という記載がZAKZAKにはあります(記事をみる)。

長尾和宏氏も「今井雅之さんのがん闘病会見を見て」という記事で、「今井さんにもぜひ、モルヒネは決して怖い薬ではないこと、まして死ぬ薬ではないことを知っていただきたいと思います。」とか「今井さんは、標準治療の前に免疫療法を受けていたという報道もありました。— 標準治療を始めるのが後回しになったのかな、と想像しながら観ていました。」とか書かれています(記事をみる)。

「がん死」は「非がん死」に比べて緩和ケアによる疼痛管理体制が整っています。一般人だけではなく医療関係者でも、この事実を知らない人がまだまだ多いことを再認識しました。安楽死はできませんが、痛みを可能な限り取り除いた中で死を迎えることはできます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました