「もったいない患者対応」の例と対策

きちんと診察したのに、後日見逃しを疑われてしまった【もったいない患者対応】
以下は、記事の抜粋です。


<今回の症例>
20代男性、自転車で走行中に自己転倒、両下肢に複数の擦過傷、右膝に3cm程度の裂創あり、来院

<負傷したときの状況を聞き出します>
医師: どんなふうに転びましたか?
患者: 前を走っていた車が急に曲がったので慌ててブレーキをかけたんですが、その拍子に転んで溝にはまってしまって…。そんなにスピードは出ていなかったので大したことはないと思います。
医師:そうでしたか。右膝の怪我は縫わないといけませんが、それ以外の傷は、洗って軟膏を塗るだけで大丈夫そうですよ。
患者:膝だけですか、よかったです。
医師:(全身を診察しながら)他に痛いところはありませんか?
患者:ありません。大丈夫です。

~3日後~

患者:昨日出張中にどうしても右手が痛くなって近くのクリニックに行ったら、骨折していました。先生、見逃したんですか?全身診察してくれましたよね?
医師:骨折ですか!?いや、痛いところはないとおっしゃっていたので…。
患者:ちゃんと診てくださいよ。クリニックの先生にも「なんで最初に診た先生がこの骨折を処置していないんだ」って言われましたよ!

【POINT】

医師は、外傷患者に対してきちんと全身診察をして「他に痛いところはないか」と聞いていました。「大したことはない」「他に痛いところはない」と言われ、唐廻先生も半ば油断していたようです。

ところが、別の病院で骨折を指摘され、患者さんから不信感を抱かれてしまいました。初診時の対応のどこに問題があったのでしょうか?

とっさの事故では、正確な情報が得づらい

外傷患者に対する問診では受傷機転の確認が最も大切です。しかし、交通外傷などはとくにそうですが、患者さん本人の受傷時の記憶があいまいなことはよくあります。つまり、患者さんの受傷機転に関する報告からは得られない情報があるかもしれない、ということに注意が必要なのです。

本人から受傷したとの訴えがなかった部位に、後から外傷が判明することもあります。初診時に全身を診察し、こうした隠れた外傷を見抜くことができればベストですが、本人の訴えがまったくなく、かつ体表面に所見が乏しいときはそう簡単ではありません。

後から悪化するケースがあることを伝えよう
そこで、患者さんには「突然のことで、どこを怪我したか自分でもわからないのが普通です。後から思いもよらぬ場所が痛くなってくるかもしれません。そのときは再度受診してください」と、あらかじめきちんと伝えておくことが肝要です。

場合によっては「最初はなんともなかったのに、翌日になって腕が痛くなって検査したら骨折が見つかったケースもありますからね」と、具体例を提示してみるのもいいでしょう。

こうした説明があるだけで、後から検査をして別の外傷が見つかっても「初診医が見逃した」と考える可能性は低くなります。

重度の外傷が潜んでいることも
外傷診療では“distracting pain”という概念があります。直訳すると“気をそらすような痛み”です。痛みの大きな部位に気を取られ、痛みは軽いものの、本来は治療を優先すべき重度の外傷を見逃してしまうことを意味します。


「あと出しジャンケン」なので、あとから気が付いた医師が優秀というわけではないと思いますが、ありがちなことだと思います。安全運転を心がけましょう。

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