2ヵ月1回の注射が女性をHIV感染から守る
以下は、記事の抜粋です。
性交渉によるHIV感染に対するリスクグループは、不特定多数を相手にする男性同性愛者(men who have sex with men:MSM)およびcommercial sex worker(CSW)を中心とした女性である。性交渉によるHIV感染予防には、コンドームの使用などsafer sexの実施が推奨されてきたが、それだけでは不十分であることが、多くの疫学データから示されていた。
一方、MSMにおいては、10年以上前よりHIVウイルスに曝露する前に予防的にTDF-FTC(今回のコントロール薬)を服用する曝露前予防(Pre-Exposure Prophylaxis:PrEP)の有効性が証明されており、すでに90ヵ国以上の国でPrEPが実施されている。WHOも2015年にPrEPを強く推奨するガイドラインを出しているが、残念ながら日本では2022年5月現在まだ承認されていない。
ところが、女性の場合、PrEPの有効性はあまり芳しくなかった。これは、女性がPrEP薬を服用することにより、CSWではないかという差別・偏見を受けたり、コンドームを使用してもらえなくなるなどのマイナス面があり、服薬の遵守が低くなりがちであることが影響していた。
治療においても一番重要な点はAdherenceである。現在、HIV感染症に対する治療法は進歩し、1日1回1錠で治療できるようになっているが、飲み忘れは起こり、治療の失敗が起こる。この問題を解決してくれたのが、半減期延長型の注射剤である。治療においては、今回のcabotegravirとリルピビリンの2剤を4週もしくは8週に1回注射することにより、治療の成功率が飛躍的に改善した。
現在ではHIVに対する治療薬が著しく進歩し、十分にHIVの増殖を抑えることが可能となったため、生命予後も飛躍的に改善しています。現在、HIV感染症は以前のような「死の病」ではなく、コントロール可能な「慢性疾患」と考えられるようになっています。
しかし、感染して放置すれば、後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome, AIDS, エイズ)は、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus;HIV)という重篤な全身性免疫不全により日和見感染症や悪性腫瘍を引き起こす状態になります。
2016年末現在、日本での新規感染者及びAIDS患者数は累計で2万7千人を突破しました。また、世界中で感染者はおよそ3670万人、年間180万人の新規感染者と100万人のAIDSによる死亡者が発生しています。
安価で有効な予防法が普及することが望まれ、本治療法はかなり期待できると思います。
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