Long term calcium intake and rates of all cause and cardiovascular mortality: community based prospective longitudinal cohort study
以下は、論文要旨の抜粋です。
目的:長期にわたるカルシウムの摂取と全死亡率および心血管死亡率との関連を調べる。
方法:スウェーデンの女性(1914~1948生まれ)61,433名を中央値19年間追跡調査を行った。全死亡(n=11,944)、心血管疾患(n=3862)、虚血性心疾患(n=1932)、脳梗塞(n=1100)による死亡について、食事およびサプリによるカルシウム摂取量との関連を前向きコホート研究で調べた。
結果:1日量600-1000mg群に比べ、1400mg超群は全死因(ハザード比1.40)、心血管疾患(同1.49)、虚血性心疾患(同2.14)による死亡率が高く、脳卒中では低かった(同0.73)。
結論:長期にわたる多量のカルシウム摂取は死亡率の上昇、特に心血管系による死因の上昇と関連した。
アメリカでは、骨粗鬆症を恐れて中年以降の女性の60%以上がカルシウム・サプリメントを摂取しているそうです。日本でも(私の周辺でも)多くの女性が骨粗鬆症の予防・治療の目的でカルシウム・サプリメントを摂取しています。
以前の記事でも、1日500mg以上のカルシウム・サプリメントの摂取によって心筋梗塞のリスクが約30%上昇することを示唆する論文を紹介しました(記事をみる)。当該論文の著者らは、カルシウム・サプリメントの骨密度や骨折予防における効果は小さいので、骨粗鬆症や骨折の予防・治療の目的でカルシウム・サプリメントを摂取することは止めるべきであるとしています。論文によると、カルシウムを摂りすぎると効果が無いばかりか、大腿骨頭骨折が約2割増えるそうです。
また、食事でカルシウムを摂取した場合は、心筋梗塞リスクは30%低下するけれども、カルシウム・サプリメントは心筋梗塞リスクを86%増加させたという報告もあります(記事をみる)。この理由は以前にも書きましたが、サプリメントの場合、摂取後に血中カルシウム濃度が急激に上昇し、これによって血管壁へのカルシウム沈着が生じることがリスク上昇の原因であると考えられています。食事による摂取では、このような急激な血中カルシウム濃度の上昇は認められないそうです。今回紹介した論文では、サプリと食事の区別はされていません。
これまでの報告をまとめると、カルシウム・サプリメントの骨密度上昇や骨折予防における効果は小さく、全死亡リスクや心血管死リスクを増大させます。骨粗鬆症や骨折の予防・治療の目的で大量のカルシウム・サプリメントを摂取することは止めた方が良いでしょう。カルシウムの多い食事ぐらいで留めておくのが正解だと思います。
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