脳梗塞の悪化抑える物質発見 大阪大など、新薬開発も
以下は、記事の抜粋です。
脳梗塞を発症したときに脳細胞の損傷範囲が広がるのを抑えるたんぱく質を、大阪大などの研究グループがマウスを使った実験で突き止めた。まひや意識障害など、脳梗塞の後遺症を抑える新薬の開発につながる可能性がある。
阪大の島村准教授らは、脳梗塞患者の血液成分と症状との関係を調べた海外での疫学データから、骨粗鬆症などにかかわるRANKLというたんぱく質に着目。脳梗塞を起こしたマウスの脳に、発症の4時間後にRANKLを直接注入したところ、注入しなかったマウスと比べて、脳の損傷部分の体積が6割ほどに抑えられたという。
脳梗塞の時には脳の免疫細胞が周囲の細胞の死を促す物質を出しており、RANKLはその放出を抑えていることも見つけた。ただ、RANKLは骨を壊す細胞を刺激する働きがあり、骨粗鬆症を起こすおそれがあるという。島村さんは「新しい治療につながる可能性があるが、投与しすぎないよう検討が必要だ」と話した。
元論文のタイトルは、”OPG/RANKL/RANK axis is a critical inflammatory signaling system in ischemic brain in mice”です(論文をみる)。
脳梗塞を発症すると血中のRANKLレベルが上昇することは以前から知られていましたが、その生理的意義は不明でした。
今回の研究では、RANKLの脳内投与で梗塞サイズが縮小したこと、RANKLノックアウトマウスでは梗塞による脳障害が野生マウスよりも大きいことなどから、RANKLは梗塞後の炎症反応を抑制する因子であることが示唆されました。
一方、RANKLのモノクローナル抗体であるデノスマブは、閉経後骨粗鬆症や骨転移を伴う悪性腫瘍に用いられています。これは、RANKLが前駆細胞が破骨細胞へと分化するのを促進し、デノスマブはこれを抑制するからだと考えられています。ということで、RANKLを脳梗塞の治療に用いるには骨粗鬆症をどう防ぐかを解決する必要があります。
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