プラスグレル (エフィエント®):3成分目のチエノピリジン系抗血小板薬は画期的な新薬か?

エフィエント:3成分目のチエノピリジン系抗血小板薬
以下は、記事の抜粋です。


2014年3月24日、抗血小板薬のプラスグレル(商品名エフィエント錠)の製造販売が承認された。適応は「経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される虚血性心疾患(急性冠症候群、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞)」。

日本循環器病学会の『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン』では、PCI施行後の再梗塞予防には抗血小板療法が推奨されている。具体的な抗血小板薬としては、アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル(プラビックス®)などが用いられる。

日本や欧米ではクロピドグレルが多く使用されているが、血小板凝集抑制作用の発現に時間を要することやクロピドグレルに対して反応性が低い患者(プアー・レスポンダー)が存在することも報告されている。

プラスグレルは、チクロピジンやクロピドグレルと同じチエノピリジン系薬剤である。生体内で活性代謝物に変換された後、血小板膜上のアデノシン二リン酸(ADP)受容体P2Y12を選択的かつ非可逆的に阻害することで、血小板凝集を抑制する。

プラスグレルは、CYP2C19の遺伝子多型の有無にかかわらず、安定した血小板凝集抑制作用を発揮すること、早期から血小板凝集抑制作用を示すことが確認されている。海外では、2009年2月に欧州で、同年7月に米国で承認されて以降、2014年3月現在、世界70カ国以上で承認されている。


記事にも書かれているように、プラスグレル(エフィエント®)やクロピドグレル(プラビックス®)などのチエノピリジン系薬剤が作用するためには、代謝されて活性型に変換される必要があります。プラスグレルはクロピドクレルよりも活性代謝物への変換効率が高く、より早く効くというのがウリの一つです。

さらに上の記事では、クロピドクレルの効果はCYP2C19の遺伝子多型によって影響を受けるが、プラスグレルは影響を受けないということもウリのように書かれています。しかしこれは誤りで、クロピドクレルによる臨床効果の主要な決定因子は、CYP2C19ではなくパラオキソナーゼ-1(PON1)であることが明らかになっています。また、大規模な臨床試験を行ったところ、プラスグレルの方が有効性が高かったけれども、出血による有害事象が増えたとか、クロピドクレルと有効性は変わらなかったというような、あまりパッとしない結果も報告されています。

また、変換効率が高いといってもプロドラッグですので、即効性を欠くために緊急PCIなどには適さず、不可逆的な受容体阻害のために血症版機能の回復に時間がかかるというクロピドクレルの問題点もまだ残っています。チエノピリジン系ではない第2世代のP2Y12受容体阻害薬チカグレロル(ブリリンタ®)は、プロドラッグではなく、投与した薬物がそのままの形で受容体に作用するため、投与後30分以内で抗血小板効果が得られます。また、受容体への結合が可逆的なため、中断後2-3日で血小板機能が回復するそうです。このあたり、チカグレロルに完敗です。

これらをまとめると、プラスグレルは、クロピドクレルよりも効力が強い(当然、副作用も強い)以外はあまり変わり映えしない薬だと思います。あまり変わらないのであれば、安価で問題点も良くわかっている古い薬を使う方が良いと思います。

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