エジプトのミイラ76体の38%に動脈硬化 動脈硬化は本当に生活習慣病か
以下は、記事の抜粋です。
長寿国日本では、動脈硬化、高血糖、高血圧は、高齢者の大半が罹患する国民病になっている。このグループは飽食と運動不足が当たり前になった現代病の典型だとするのが大方のコンセンサスだ。では現在とは違っておそらく飽食など考えられなかった古代から中世までの人たちには動脈硬化がなかったのか?
この問いについて答えるべく、現存するミイラの血管を調べた最近の研究をまとめたのが今日紹介する総説。タイトルは”Computed tomographic evidence of atherosclerosis in the mummified remains of humans from around the world”だ。
この結果、博物館にあるミイラはまずCTで調べられるようになった。この総説では、エジプトのミイラ76体の38%、ペルーのミイラ51体のうち25%に動脈硬化が発見されている。従って動脈硬化は現代の病気ではなく紀元前の人間の病気であったことは確かだ。
まだ大規模農業が発達せず、社会的不平等の大きくない社会を形成していたアメリカ大陸のプエブロ・インディアン、おびアリューシャン列島で見つかったミイラでも40~60%に動脈硬化が確認された。そしてなんと、チロルで発見され世界中を湧かせたミイラ、アイスマンにも動脈硬化が見られた。動脈硬化は現代よりはるかに粗食を続けている古代人もかかっていたようだ。
ミイラのCT調査から、動脈硬化が現代病ではなく、古代から人類に普通に見られる病気だったことが分かる。また、必ずしも生活習慣病でもなさそうだ。
とすると、ミイラは全く新しい動脈硬化の原因を教えてくれているのかもしれない。ご存知のように、アイスマンの全ゲノムは解読され、動脈硬化と関連する多型を持っているようだ。これは私の妄想だが、ひょっとすると動脈硬化がある方が寒い地方で狩りで生活をしていた人間には都合が良かったのかもしれない。シロクマは北極圏に適応する進化の過程で動脈硬化に関わる様々な遺伝子を変化させ、血液を寒さから守っている。老人の妄想は果てしなく続く。
これはあの西川伸一大先生の書かれた記事のようです。CTを用いた調査で、エジプトだけではなく、世界中のミイラの25%以上に動脈硬化があったことから、「動脈硬化が現代病ではなく、古代から人類に普通に見られる病気だったことが分かる。また、必ずしも生活習慣病でもなさそうだ。」という結論を出されています。
しかし、同じ方法で現代人を調べた結果(コントロール)が紹介されていません。戦死した米兵についての過去の報告では、朝鮮戦争では77%に脂肪線条が認められ、ベトナム戦争では造影で45%にプラークがあったとされています。これらの結果は、評価法によって結果がかなり異なる可能性と、現代人はミイラよりもはるかに多くの動脈硬化病変がある可能性を示唆しています。
あと、グリーンランドに住むエスキモー(イヌイット)の血栓症発生リスクが非常に低いことは良く知られていて、彼らには動脈硬化も少ないと思われています。これがEPAの豊富な摂取のためかどうかは別として、「動脈硬化がある方が寒い地方で狩りで生活をしていた人間には都合が良かった」というのは、やはり妄想のような気がします。
シロクマについては、明日もう一度議論します。
コメント
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飽食や栄養満点の食事を(特にお肉系など)していないのですが・・ 動脈硬化の可能性がある者にとっては興味深々の話題です。
何気に、納得しています。