日本の不眠治療の現状

不眠症治療について日本の医師はどう考えているか
興味深い記事です。以下は、抜粋です。


ベンゾジアゼピンや非ベンゾジアゼピンは、安全性への懸念や新規催眠鎮静薬(オレキシン受容体拮抗薬、メラトニン受容体作動薬)の承認にもかかわらず、依然として広く用いられている。

秋田大学の竹島氏らは、日本の医師を対象に処方頻度の高い催眠鎮静薬およびその選択理由を調査した。その結果、多くの医師は、オレキシン受容体拮抗薬が効果的かつ安全性が良好な薬剤であると認識していたが、安全性よりも有効性を重要視する医師においては、ベンゾジアゼピンや非ベンゾジアゼピンを選択することが確認された。

2021年10月~2022年2月に、日本プライマリ・ケア連合学会、全日本病院協会、日本精神神経科診療所協会に所属する医師962人を対象にアンケート調査を実施した。調査内容には、処方頻度の高い催眠鎮静薬およびその選択理由を含めた。

主な結果は以下のとおり。

・処方頻度の高い催眠鎮静薬は、オレキシン受容体拮抗薬(84.3%)、非ベンゾジアゼピン(75.4%)、メラトニン受容体作動薬(57.1%)、ベンゾジアゼピン(54.3%)の順であった。
・ロジスティック回帰分析では、オレキシン受容体拮抗薬の処方頻度の高い医師は、そうでない医師と比較し、有効性(オッズ比(OR):1.60)および安全性(OR:4.52)への関心が高かった。
・メラトニン受容体作動薬の処方頻度の高い医師は、そうでない医師と比較し、安全性への関心が高かった(OR:2.48)。
・非ベンゾジアゼピンの処方頻度の高い医師は、そうでない医師と比較し、有効性をより重要視していた(OR:2.43)。
・ベンゾジアゼピンの処方頻度の高い医師は、そうでない医師と比較し、有効性に最も関心が高く(OR:4.19)、安全性にはあまり関心を持っていなかった(OR:0.25)。
・多くの医師は、オレキシン受容体拮抗薬が効果的かつ安全性が良好な薬剤であると認識していたが、安全性よりも有効性を重要視する医師においては、ベンゾジアゼピンや非ベンゾジアゼピンを選択することが確認された。


元論文のタイトルは、「不眠症に対する催眠薬に対する医師の態度:アンケートに基づく研究」です(論文をみる)。

論文によるとこれは、メラトニン受容体作動薬(MRA) や オレキシン受容体拮抗薬(ORA)などの新しい催眠薬を含む、不眠症の薬に関する選択に対する態度を調べた最初の研究です。私は、オレキシン受容体拮抗薬がこんなに多く使われているとは知りませんでした。

頻繁に オレキシン受容体拮抗薬(ORA) を処方する医師は、効果的で安全ですが、高価であると考えています。ORA の薬価は高いですが、以前の研究では、レンボレキサント(ORA) がゾルピデム(NBZ)よりも費用対効果の点で優れていることが示されました。したがって、ORA のコストが高いにもかかわらず、有効性と安全性のために ORA を頻繁に処方する場合があるようです。

非ベンゾジアゼピン(NBZ)は、 2 番目に多く使われています。多くの場合、処方者は、NBZ が有効であり、慣れ親しんでいるが、安全であるとは考えていません。最近の 報告では、不眠症の治療に関して、プラセボと比較してより多くの副作用があったことが報告されています。さらに、ベンゾジアゼピン(BZ)で指摘されているように、NBZ は転倒のリスク増加 などの副作用と関連しています。さらに、NBZ は BZ と比較しても催眠薬の長期使用のリスク増加と関連しているようです。

基本的には、薬に頼らない不眠治療、高齢者でのNBZおよびBZ使用の中止をめざし、どうしても使う場合はORAということになりそうです。

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