デング熱ワクチン、メキシコで認可
以下は、記事の抜粋です。
仏製薬大手サノフィ(Sanofi)は12月9日、同社が開発した史上初のデング熱ワクチンがメキシコで認可され、世界で初めて一般向けに販売されることになったと発表した。
蚊が媒介する感染症であるデング熱は、世界で年間に最大4億人が感染している。同社ワクチン部門のOlivier Charmeil氏は、デング熱ワクチン「デングワクシア(Dengvaxia)」を「この10年間で最大の革新的発明」と評した。
このワクチンは商業的に「大成功」を収める可能性を秘めており、10億ドル(約1200億円)以上の収益を同社にもたらす可能性があるという。デングワクシアの研究・開発には、20年の歳月と15億ユーロ(約2000億円)以上の費用がかかっている。
サノフィは、これまでに20か国で、デングワクシアの承認を申請している。Charmeil氏によると、「今後数週間のうちに、アジアと中南米でさらに多くの登録が行われる予定」という。
15か国の4万人を対象に実施された臨床試験では、デングワクシアは9歳以上のワクチン接種者の3分の2に免疫性を与えることが可能と判明、デング熱の重症型であるデング出血熱に対しては、この割合は93%にまで上昇した。さらに、入院のリスクを80%減少させることも、臨床試験で分かっている。
このワクチンについて興味深い記事があったので、以下に紹介します。
以下は、記事の抜粋です。
ウイルスには4種類の血清型がある。この疾患のやっかいなところは一度ひとつの型のウイルスに感染すると、次に別の型のウイルスに感染した際にきわめて重篤な症状を示し(デング出血熱)、この場合の致死率がかなり高いことである。
そのためデング熱のワクチン開発においては単価ワクチンではなく、4つの血清型全てに対する多価ワクチンの開発が望ましいと考えられてきた。
この考えのもとに最初に臨床試験に到達したのはサノフィの、組み換え型弱毒生ワクチン(CYD-TDV)である。2回の第3相試験がアジア、ラテンアメリカ計10ヶ国で既に終了している。その結果、このワクチンは9歳以上の子供に対しては高い感染防御効果を示したが、それ以下の年齢の子供にはあまり効果がなかった。しかしこのそれほど効力のないワクチンの認可が望まれている。この状況は効果の高いワクチンのみが承認されていたこれまでの状況と大いに異なる。
デング熱の流行は感染そのものによる人的被害のみならず、入院患者の急増による地域医療の圧迫をもたらす。したがって、ワクチン接種は感染による人的被害とともに医療施設に対する負荷を低下させる効果を持つ。このように考えると効力の低いワクチンでも、公衆衛生上の効果はもたらされるというわけだ。
こうした考えのもとに評価すると、サノフィのワクチンは16歳以上で比較的高い効果があり、かつ安全である。さらに入院したケースも顕著に減少したので、地域医療に対する負荷を軽減する効果があったと判断されたのだ。
デング熱には動物モデルがなく、ヒトでの臨床試験でのみ、その有効性が調べられるそうです。また上の記事にも書かれているように、4種の抗原を同時に免疫する必要もあるので、開発に多額の努力と費用がかかったことは理解できます。ただ、このような効力の低いワクチンは、日本で普及する可能性は低いと思います。
それにしても、サノフィがこのワクチンの開発にかけた年月と費用は、大学での研究者には気の遠くなるような数字です。
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