バイアグラが白色脂肪細胞を褐色脂肪細胞に変換-マウス実験 ドイツ研究
以下は、記事の抜粋です。
バイアグラは勃起不全(ED)の治療薬だけではなく、不要な脂肪細胞を変換する効果があることがドイツ・ボン大学のマウスを使った研究で判明した。研究結果は、FASEB Journalに1月9日、発表された。
研究チームは、肥満マウスに7日間、バイアグラの作用物質である「シルデナフィル(sildenafil)」を投与。その結果、マウスの体重が減少。下腹部やお尻、内臓の回りなどに多く存在する白色脂肪細胞が褐色脂肪細胞に変換した。さらに、ある特定の状況下では、肥満による合併症のリスクが低下することも分かった。
脂肪細胞には白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞とがあり、脂肪を蓄える方の脂肪細胞は「白色脂肪細胞」と呼ばれ、体温維持などを目的として脂肪を燃やす脂肪細胞は「褐色脂肪細胞」と呼ばれる。
褐色脂肪細胞が多い人はエネルギー代謝が高く、太りにくいとされている。白色脂肪細胞は、体内に入った余分なカロリーを中性脂肪の形で蓄積する働きがある。肥満に伴い大型化した白色脂肪細胞が増加すると、脂肪細胞の機能不全に陥る。
白色脂肪細胞が内臓のまわりに過剰蓄積すると、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の発症につながり、脂質代謝異常や炎症などを引き起こすことがある。研究結果はマウス実験だけによるものである。ヒトの白色脂肪細胞を減少させる薬剤であるかどうかを導き出すには、まだ長い道のりが待っている。
元論文のタイトルは、”Increased cGMP promotes healthy expansion and browning of white adipose tissue”です(論文をみる)。
研究者らは、cGMPによって活性化されるリン酸化酵素(PKGI)に注目しました。PKGIは 脂肪細胞に発現しています。脂肪細胞をcGMPで処理するとPPARγの発現が増加し脂肪生成が増加しました。
これらの反応に加えて、PKGIは褐色脂肪細胞への分化を促進しました。さらに、上の記事に書かれているように、cGMPを分解する酵素の阻害薬であるシルデナフィルをマウスに投与すると、褐色脂肪細胞様の細胞が増加したそうです。
これらの結果から、PKGIは細胞のサイズ決定、アディポカインの分泌、白色脂肪細胞の褐色化の重要な制御因子であり、抗肥満薬の重要な薬物標的であると主張しています。記事ではシルデナフィルが抗肥満薬になるような書き方をしていますが、論文ではむしろPKGIを中心に書かれています。
いずれにしても、シルデナフィルを抗肥満薬として常用するわけにもいかないでしょうし、PKGIを特異的に活性化するような薬物も簡単には開発されないでしょう。
抗肥満薬としては、関連記事で紹介したようにいくつかの薬物がアメリカで承認間近のようですので、これらが先に普及すると思います。
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