以下は、記事の抜粋です。
喫煙者の肺がんでは、がん細胞での突然変異の発現頻度も大幅に増加するようだ。ワシントン大学のRamaswamy Govindan氏は、喫煙グループのがん細胞で見つかった点突然変異の発現頻度が、喫煙したことがないグループの約10倍に上ることを、Cell誌で明らかにした。しかも、抗がん薬の標的となる変異は喫煙したことがないグループで見られる傾向にあるという。
たばこの煙には数多くの発がん性物質が含まれていることから、喫煙者の腫瘍を調べれば多くの突然変異が見つかるだろうということは、当初から想定されていた。しかし、「これほど差があるとは考えていなかった」とGovindan氏。
同氏らは、肺がん(非小細胞肺がん)患者17人(喫煙者12人、喫煙歴なし5人)から採取したがん標本17検体(腺がん16検体、大細胞がん1検体)について、全ゲノム解析を行った。
その結果、喫煙グループの標本で見つかった点突然変異の頻度は、喫煙歴なしグループの標本の平均10倍に上っていた。さらに、喫煙歴なしグループの全標本には、抗がん薬(他のがんに対する治療薬や臨床試験中の薬剤も含む)の標的となり得る突然変異が1個以上含まれていたのに対し、喫煙グループの標本ではこのような現象が見られなかったという。
元論文のタイトルは、”Genomic Landscape of Non-Small Cell Lung Cancer in Smokers and Never-Smokers”です(論文をみる)。
喫煙者の点突然変異の発現頻度が10倍であること以外に、1)C:G→A:T変異は喫煙者に多い。2)C:G→T:A変異は非喫煙者に多い。3)EGFRとROS1の変異及びALK融合は非喫煙者に多く、KRAS、TP53、BRAF、JAK2、JAK3、mismatch repair遺伝子の変異は喫煙者に多い。などが明らかになりました。
これらの結果は、特定のDNA修復経路における変異が発見された肺がんに対してはBRCA1/2遺伝子の機能不全をもつがん細胞に有効なPARP(poly[ADP]-ribosepolymerase)阻害薬(例えば、オラパリブ、olaparib)が有効であろうとか、クロマチン修飾遺伝子における多くの異常が本研究によって明らかになったので、これらにはHDAC阻害薬などのエピジェネティック治療が有効であろう、などを示唆しています。
この論文も、先日関連記事で紹介したTCGAの仕事です。これからもどんどん結果が出てきそうです。力ずくの研究でのアメリカの強さは変わらないですね。いずれにしても、タバコは止めましょう。
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