重度のアルコール依存症に対するナルメフェンのランダム化比較試験
以下は、論文要約の抜粋です。
目的:アルコール摂取量を減らすことは、アルコール依存症患者に対する治療アプローチの1つである。本研究では、飲酒リスクレベルが高~非常に高い日本人アルコール依存症患者を対象に、心理社会的支援と組み合わせたナルメフェンとプラセボの効果をランダム化二重盲検試験によって比較した。
方法:本試験は、多施設で行われた第3相臨床試験で、対象患者は、心理社会的支援と併せて、必要に応じてナルメフェン20mg群、10mg群、プラセボ群にランダムに割り付けられ、24週間にわたって治療を行った。主要評価項目は、大量飲酒日数(heavy drinking day:HDD)のベースラインから12週目までの変化とした。副次的評価項目は、総アルコール摂取量(total alcohol consumption:TAC)のベースラインから12週目までの変化とした。
結果:12週目の主要評価項目の分析対象症例数は、ナルメフェン20mg群206例、ナルメフェン10mg群154例、プラセボ群234例であった。ナルメフェン群は、プラセボ群と比較し、12週目のHDDの有意な減少が認められた(20mg群:-4.34日/月、10mg群:-4.18日/月)。同様に、12週目のTACの有意な減少も認められた(p<0.0001)。 有害事象の発生率は、ナルメフェン20mg群87.9%、ナルメフェン10mg群84.8%、プラセボ群79.2%であった。これらの事象のほとんどが軽度または中程度であった。
結論:ナルメフェン20mgまたは10mgは、飲酒リスクレベルが高~非常に高い日本人アルコール依存症患者に対し、アルコール摂取量を効果的に減少させ、忍容性も良好であった。
元論文のタイトルは、”Nalmefene in alcohol‐dependent patients with a high drinking risk: a randomized controlled trial”です(論文をみる)。
ナルメフェン(セリンクロ®)は昨年の12月に承認された新薬ですが、このブログではかなり以前から注目して以下の関連記事のように多くの記事を書いてきましたので、メカニズムなどについてはそちらをご覧ください。
これまでの薬が断酒を目的としていたのに対して、ナルメフェンは飲酒量を減らすことを目的としており、患者に受け入れやすいのではないかと思います。「服用すると、飲酒してもさほど気分が高揚せず、飲む気が失せていく」そうです。
日経メディカルの「飲酒量を減らす新薬セリンクロ、どう使う?」という記事によると、24週の服用期間を過ぎても少なくとも4週間は酒量が増えなかったそうです。また、使い方としては「3ヵ月使ってみて効果を評価し、次を考える」そうです。10㎎錠の薬価が296.4円とかなり高いので、長期間の服用や服用後の酒量増加などの問題は残っています。
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