「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」、名古屋市長が《平和の少女像》の撤去を要請

「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」、名古屋市長が《平和の少女像》の撤去を要請
以下の記事を読んで、日本での表現の自由の危機を感じました。この記事が出て数日後に少女像の展示は中止されました。


日本における「表現の不自由」を見せる展示で、それを裏付けする事態が起ころうとしている。

物議を醸しているのは、「あいちトリエンナーレ2019」の出展作家の1組である「表現の不自由展・その後」が展示した、キム・ソギョンとキム・ウンソンの《平和の少女像》(2011)。

そもそも「表現の不自由展」とは、2015年に東京のギャラリー古藤で開催された展覧会であり、検閲や忖度によって展示される機会を失った、つまり表現の自由が与えられなかった作品を集めたものだ。

その一部である《平和の少女像》(2011)は、「『慰安婦』被害者の人権と名誉を回復するため在韓日本大使館前で20年続いてきた水曜デモ1000回を記念し、当事者の意志と女性の人権の闘いを称え継承する追悼碑として市民団体が構想し市民の募金で建てられた」もの。現在では韓国国内の複数ヶ所に加え、韓国国外でも設置されている。

「民衆芸術」の流れを汲むキム・ソギョンとキム・ウンソンがつくった本作は、少女像の隣に空席の椅子があり、誰もがそこに座り、作品の一部となることが意図されている。

しかし本作をめぐっては、日本政府が在韓日本大使館前からの撤去を要請するなど、議論の渦中にある作品であるとも言える。

あいちトリエンナーレ2019では、ブロンズ製のミニチュア1体と、FRP製の像1体が展示されているが、これに対して河村たかし名古屋市長は、展示の中止と撤去を同トリエンナーレ実行委員長の大村秀章愛知県知事に要請すると発表。『産経新聞』(8月2日)によると、河村市長は従軍慰安婦問題が「事実でなかった可能性がある」「国などの公的資金を使った場で展示すべきではない」と語ったという。期せずして、表現が「不自由」になる過程が露わになったかたちだ。

この事態に対し芸術監督の津田大介は、「表現の不自由展」を参加作家に加えた意図について、「この世のほとんどの事柄は白黒はっきりつけられない、グレーなものだと定義しています。そのグレーの濃淡を考えるという意味でも『表現の不自由展』を参加作家に加えています」との声明を発表。

「企画内での展示作品についてなんらかの賛否を述べるものではない」としながら、「行政が展覧会の内容について隅から隅まで口を出し、行政が認められない表現は展示できないということが仕組み化されるのであれば、それは憲法21条で禁止された『検閲』に当たる」と主張する。

なお「表現の不自由展・その後」については、抗議の電話が殺到している状態で、テロ予告や脅迫とも取れるもの、対応した職員個人を攻撃するものも含まれているという。これを受け、来場者および職員の安全が危ぶまれる状況が改善されないようであれば、展示の変更も含めなんらかの対処を行うことを考えているという。

そのいっぽうで津田は、「日本が自国の現在または過去の負の側面に言及する表現が安全に行えない社会となっていることをそうやって内外に示すことの意味をよくお考えいただき、自制的に振る舞っていただくことを期待しております」ともコメントしている。

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