以下は、記事の抜粋です。
がん検診はお任せ――。
九州大医学部第二外科の前原喜彦教授らのグループが、がん患者特有のにおいが分かる「がん探知犬」に、大腸がん患者の呼気などをかぎ分ける実証試験をした結果、9割以上の精度で患者を判別できた。研究成果は英国の医学誌「GUT」に掲載される。
探知犬は、千葉県南房総市の「セントシュガー がん探知犬育成センター」が飼育しているラブラドルレトリバー(9歳、雌)。名前は「マリーン」で、海難救助犬として飼育されていたが、嗅覚や集中力が特に優れていたことから、がんのにおいをかぎ分ける訓練を受けている。
グループは2008年6月から09年5月にかけ、福岡、佐賀県内の2病院で、消化管の内視鏡検査を受けた約300人から呼気と便汁を採取。内視鏡検査で大腸がんと分かった患者の1検体と、がんではなかった患者の4検体を一つのセットにして、探知犬に挑戦させた。呼気では36セットのうち33セット、便汁では38セットのうち37セットで「正解」をかぎ分けた。
イヌに患者の呼気をかがせてがんを診断する試みは、上記の研究が最初ではありません。2006年のNational Geographic Newsに以下の記事がありました。
Dogs Smell Cancer in Patients’ Breath, Study Shows
この記事にも、乳がん患者と肺がん患者を88-97%の精度で判別したと書かれています。また、肺がんの場合はスモーカーかどうかという問題もありますが、それも克服したそうです。
どういう根拠かわかりませんが、イヌの鼻は、ヒトの鼻よりも、匂いをかぐという点では10,000-100,000倍も優れているとも書かれています。
しかし、イヌの嗅覚によるがん診断が9割以上の精度あるいは97%の精度だったとしても、実際の臨床に使われるのかどうか疑問です。National Geographic Newsの発表から5年近く経ちますが、「がん犬診」はまだ一般には行われていないようです。
以下のような問題があると思います。
1)イヌの体調はいつも一定ではない。
2)偽陰性・偽陽性の可能性がゼロではない。
3)科学的な診断に直結しない。
4)早期のがんでも発見できるのか? などなど
偽陰性の責任をイヌがとるわけにもいかないでしょう。質量分析とかクロマトグラフィーとかで呼気中の揮発性マーカー分子を同定するしかないと思うのですが・・・・・・・
実証試験で使われたがん探知犬「マリーン」。
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