Tumour vascularization via endothelial differentiation of glioblastoma stem-like cells
以下は、論文要約の抜粋です。
神経膠芽腫(glioblastoma)は、高度に血管新生が起こる悪性腫瘍で、その新生血管は既存の脳毛細血管の出芽から生じると考えられていた。
神経膠芽腫を維持しているのは、神経膠芽腫幹細胞様細胞(glioblastoma stem-like cells, GSC)であることが最近明らかにされ、これらの幹細胞様細胞は神経細胞系列以外にも分化する可能性が示されている。
がん化していない神経幹細胞は、機能的な内皮細胞に分化できる。このように、神経幹細胞と内皮系との関連は神経膠芽腫において重要だと考えられる。
本論文では、神経膠芽腫内の血管内皮細胞(20~90%の範囲、平均60.7%)には腫瘍細胞と同様のゲノム変化がみられることを示す。このことから、その血管内皮のかなりの割合が腫瘍由来であることが示唆される。
この血管内皮を免疫不全マウスに移植すると、非常に血管が豊富な未分化腫瘍を形成した。また、GSCはin vitroで、内皮細胞の表現型および機能の特徴をもつ細胞に分化した。同様に、GSCを免疫不全マウスに移植すると、異種移植腫瘍が生じ、その血管は主にヒトの内皮細胞で構成されていた。
side by sideで別のグループによるほとんど同じ仕事が掲載されています。タイトルは、”Glioblastoma stem-like cells give rise to tumour endothelium”です(論文をみる)。2つのグループはどちらも、腫瘍を栄養する血管の内皮細胞の一部は腫瘍細胞と同じゲノム異常を示すと書いています。ゲノム異常とは多コピーのEGFR遺伝子やp53遺伝子の変異などです。
さらに研究者らは、これらの異常なゲノムをもつ血管内皮細胞は、がん幹細胞様細胞由来である証拠―がん幹細胞マーカーCD133―をもつことを示しています。彼らは、がん幹細胞様細胞がNotchシグナルによって内皮前駆細胞に分化し、さらにこれらがVEGF刺激によって血管を形成すると考えています(下図)。
上記論文要約のように、ヒト神経膠芽腫内の血管内皮をマウスに移植すると新生血管に富む腫瘍ができます。その腫瘍内の血管は、周辺に近いところのものはマウスの内皮細胞由来ですが、これらは内側のヒトがん幹細胞様細胞由来の血管とつながっているそうです。
他のがんでもがん幹細胞(様細胞)が腫瘍内血管をつくるということがあるのかはまだ不明ですが、がんが自分を栄養する血管を作りながら浸潤するというのはすごい発見だと思います。
がん幹細胞様細胞は多能である(Natureより)
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