第6波ピークアウトは早く、流行規模も小さい? 当初想定と異なるオミクロンとどう向き合えば良いのか

第6波ピークアウトは早く、流行規模も小さい? 当初想定と異なるオミクロンとどう向き合えば良いのか
あたれば嬉しい予想です。


日本より先に流行が始まった海外のデータを見ると、オミクロンの明るい要素も見えてきます。「戦いを有利に進められる」という日本で、 8割おじさんこと西浦博さんはどのように今後の対策を見据えているでしょうか?

世代時間は「デルタ=5日」→「オミクロン=2日」

世代時間というのは、感染源となる感染者が自分が感染してから2次感染を起こすまでの時間間隔のことを言います。要するに、感染者がどれぐらいのスピードで移り変わるかを示しています。

デルタ株の平均世代時間はここでは4.6日ですが、オミクロンは2.1日です。世代交代が早いので、思ったよりも勝負が早く済む可能性があります。世代時間5日間では流行開始から50日でピークを打ちます。一方で、世代時間が2日だと、22日ぐらいでピークになります。しかも新規感染者数の伸び方が急激です。

入院患者数のピークも早く訪れます。これまでだったら入院患者のピークとして備えなければいけないのは流行70日目ぐらいで、最悪に備えるまでに2ヶ月以上もあって比較的余裕がありました。この計算だと30日目で入院患者数ピーク(最悪の状態)が来ます。

より早く流行し、より急峻な流行曲線になることが問題であるとわかってきました。

もし伝播がこのまま進むと、流行期間自体はこれまでとは比べものにならないぐらい短く終わることになると思います。海外での観察結果を元に考えれば、日本で1月に入って流行が始まったことを考えると、大規模流行に突入した場合には早ければ1月末とか、2月の上旬にピークになるかもしれないということですね。

日本にとって厳しいのは、ピークが早まり、高くなれば、医療の逼迫もものすごい規模のものが一瞬でドンと訪れることになることです。日本の医療提供体制はこれまでも薄氷の上に立っている状態でした。今後感染者数が増加したときの医療提供体制は相当に厳しいと思います。

実効再生産数は当初の想定よりも低く 流行規模も小さくなる可能性

昨年12月のインタビューでは「オミクロンの実効再生産数はデルタ株の3〜4倍」とお話していました。その時の推定値は世代時間がデルタとオミクロンで変わらないという想定のもとで、平均5日間として計算していました。

オミクロンの増殖が早いのは揺るぎのない事実ですが、その中で世代交代が早いことを加味すると、実効再生産数はこれまで想定していたよりも小さいことがわかりました。デルタの1.5倍から2.5倍の間くらいであろうとデータを更新しています。当初考えていたよりは低そうだとわかったのです。

オミクロンの基本再生産数もデルタ株より低そうであることがわかってきています。だいたい2台ではないかと考えられます。

既にピークアウトしたと思われる他の国々の流行を見ても、ピークはそこまで高くありませんでした。仮に大規模な流行を許してしまったとしても、最悪の地獄絵図のようなことは起きないということです。

感染する人の割合も当初の想定よりは少なく済みそうです。ただ日本の医療提供体制は他の国に比べると脆弱なので、大流行すれば医療逼迫は起きます。でも医療提供体制に対する負荷は、当初の最悪想定よりもマシになりそうだとわかっています。

オミクロンは適切に抑制政策を打てば、後手後手に回るようなことは避けられる可能性があります。これはオミクロンの流行を遅らせることができた日本の明確なアドバンテージだと思います。南アフリカ、イギリス、アメリカの流行を横目に見ながら、どういうメカニズムでこの株の流行が起きているのかを知り、予防接種に関する知見もだいたいが出そろう。そうすると、理詰めでベストの対策が何かを考え、それをうつことができるのです。

時間稼ぎをした短い12月期の間、残念ながらブースター接種が高齢者で劇的に進むことはありませんでした。しかし、そのかわりに他国の状況をじっくり見てオミクロンの性質を知ることができたのは、日本の戦いを間違いなく有利にすると思います。

日本は流行までの時間を稼いだ結果、有利に戦える

日本では先行する外国の状況を見て理詰めで冷静に避けることができる。少なくともそういう判断ができるカードをもらえているということです。その対策を進めながら、高齢者や基礎疾患のある人に3回目接種を進めると、救える人たちをちゃんと救いながら第6波を駆け抜けることができるのではないでしょうか。

流行開始当初、南アフリカなどは国際的な支援が必要になるのではないかと心配していましたが、急激に上がった後、急激に低下しています。流行ピーク前に実施された行動制限の影響もありますが、集団免疫もできた。これはかなり明るい兆しです。

日本も第6波の夜が明けるのはそんなに遠くないのです。長いトンネルに入ったわけではない、と考えましょう。

 

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