ピオグリタゾン(アクトス®)の2年or28,000mg以上の使用で膀胱がんリスクが2倍以上に

カナダ研究者、武田「アクトス」のがん発症リスクに関する論文発表
以下は、記事の抜粋です。


英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル電子版は5月31日、ピオグリタゾンを含有する武田薬品工業の糖尿病治療薬「アクトス」に関するカナダの研究者らによる論文を掲載した。

論文は、アクトスの服用によって膀胱がんが発症する絶対リスクはなお低いものの、アクトスを2年以上服用すると、がんの発症リスクが倍に上昇すると指摘している。

論文は、1988─2009年に新たに糖尿病治療を受けた英国の患者11万5000人余りの記録を分析し、リスクを数量化している。分析では、2年もしくはそれ以上にわたってアクトスが投与された場合、複数年で10万人当たり88件、28,000mg以上を服用した患者では137件の追加的症例が見られたことが分かった。

アクトスと膀胱がんの関連性に対する懸念は昨年、欧米の監督当局がリスクについて警告したことで注目を集め、同薬の売り上げに影響を与えた。


元論文のタイトルは、”The use of pioglitazone and the risk of bladder cancer in people with type 2 diabetes: nested case-control study”です(論文をみる)。

ピオグリタゾン(pioglitazone、アクトス®)は膀胱がんの発症と関連していたけれども、同じ thiazolidinedione系薬物のロシグリタゾン(rosiglitazone)ではそのような関連は認められなかったそうです。

また、膀胱がんリスクの増加はピオグリタゾンの試用期間と用量に依存していました。具体的には、10万人当たり年間73例の膀胱がん発症が、ピオグリタゾンを2年以上使用すると88例増加し、28,000mg以上の使用は137例増加したということです。

関連記事に書いたように、ちょうど1年前、仏・独当局は膀胱癌発症リスクを懸念してピオグリタゾンの新規処方を差し止めました。同じチアゾリジン系経口糖尿病治療薬のロシグリタゾン(アバンディア®)は、99年に発売されましたが、07年にメタ解析の結果から心血管イベントリスクを上昇させるという指摘があり、10年にEMAが完全な市場撤退、それに引きずられたFDAが新規処方中止を勧告しました。

この論文によって、ピオグリタゾンもロシグリタゾンと同じ道を歩む可能性があります。しかし、PPARγの活性化は糖尿病だけではなく、様々な疾患に応用できる可能性があります。膀胱がん増加の比率は高いですが、絶対数は少ないです。リスクがあることを知った上で、上手に使うことが重要だと思います。

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