マイクロRNA注入によるマウス心臓線維芽細胞から心筋細胞への直接再プログラミング

RNA注入で心筋梗塞治療=マウスで細胞の種類を直接転換-米大学
以下は、記事の抜粋です。


遺伝子の働きを調節する短いリボ核酸(RNA)「マイクロRNA」を急性心筋梗塞を起こした状態のマウスの心臓に注入し、回復を促すことに成功したと、米デューク大医療センターの研究チームが4月27日、サーキュレーション・リサーチ電子版に発表した。マイクロRNAが心臓組織の多くを占める線維芽細胞に作用し、血液のポンプ機能を担う心筋細胞に直接転換した。

生きたマウスでの心臓線維芽細胞の心筋細胞への直接転換は、米グラッドストーン研究所チームが4月19日に3種類の遺伝子を導入する方法を発表したばかり。デューク大チームは大型動物での実験を経て、10年以内に心筋梗塞患者に臨床応用することを目指している。


元論文のタイトルは、”MicroRNA-Mediated In Vitro and In Vivo Direct Reprogramming of Cardiac Fibroblasts to Cardiomyocytes”です(論文をみる)。

2010年の関連記事では、試験管内での線維芽細胞から機能的心筋細胞への直接再プログラミングを紹介しましたが、上の記事のようにグラッドストーンのチームは同じ3つの遺伝子を使って生きたマウスでの実験も成功したようです(論文をみる)。

この記事で紹介されているデューク大のチームは、マイクロRNA (microRNAまたはmiRNA)を用いたまったく異なる方法で、試験管内と生きたマウスの両方で、心臓線維芽細胞から心筋細胞への直接再プログラミングに成功しました。

miRNAは、約20塩基の蛋白質をコードしない機能性低分子RNAであり、特定のmRNAに作用してmRNAの翻訳を抑制します。がんの発症や記憶の形成など、極めて広範囲の生命現象に関わるとされています。研究グループは、miRNA-1、miRNA-133、miRNA-208、miRNA-499という4種類のmiRNAの組み合わせが直接再プログラミングを誘導すること、およびJAK inhibitor Iを添加すると再プログラミング効率が10倍高まることを発見しました。

私は、この論文をみるまで、miRNAについてはそれほど重要だとは考えていませんでした。今後はこの考えが少し変わるかもしれません。

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