3月に行われた第18回日本再生医療学会総会の中で、外科医でもある衆議院議員 厚生労働委員長の冨岡 勉氏が「再生医療を推進するために政治はどう取り組むべきか」と題して基調講演を行ったそうです。上のタイトルは、その講演の内容を紹介する記事のタイトルです。以下は、記事で紹介された冨岡氏の講演です。
世界時価総額ランキング上位20社中、1989年における日本企業は14社を占めた。しかし、2018年その数はゼロ。ほぼ米・中の争いである。研究の活性化指標である論文数の国別順位と国別論文シェアをみると、ゲノム編集、免疫療法、核酸医薬などがんゲノムに関連のテーマでわが国は上位にあるものの、その分野でも1位は米・中である。
このような中、日本が世界で勝てる分野の1つが再生医療分野だ。日本の再生医療は、iPS細胞発生国としての高度な技術力、学術コミュニティの活発さ、先進的シーズの存在という強みがある。さらに、再生医療の実用化を促す再生医療推進法などの再生医療3法が2013年に成立し、わが国の再生医療の規制制度は欧米国も模するほど先進的なものとなった。
このような状況の中、わが国の再生医療等製品の研究は活発化したが、商業的に世界をリードしているとは言えない。承認品目数は欧州の36、米国の21に対し、日本は4製品である。その売り上げはまだ10数億程度であり、世界に渡り合える状況ではない。ただ、開発品目については、現在19と欧米には水をあけられているものの、規制制度の改善などで大きく増加していくと期待される。現在の弱みは、欧米でみられる集中型細胞製造拠点の欠如、商用流通に耐え得る細胞バンクの脆弱性などだという。
日本の再生医療が、今後世界と戦っていくためには、再生医療分野における新規参入を促進する制度整備、細胞を大量調達できる制度整備、再生医療審査の迅速化、医療経済的観点からのアプローチ、融合研究開発を行う中核センターの確立が必要である。国会議員連盟はそのために全力を尽くす。
冨岡氏が主張する「再生医療審査の迅速化」は、関連記事で紹介したように、効果が証明されていない治療を上市することに直結しています。また、患者のリスクに目をつむって、日本の再生医療関連メーカーの利益を優先することにもなります。
さらに、細胞培養などを伴う「再生医療」をどんどん今の日本の医療に導入することは、医療費の高騰をもたらし、保険医療体制の崩壊を招く恐れがあります。
「医療」に外国との勝ち負けを想定すること自身、医師ではなく、安物のビジネスマンの発想です。世界のどことでも協力して、脊髄損傷や重症網膜疾患やパーキンソン病などの難治疾患を治すのが「再生医療」の目標だと思います。
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