「砒素で生きる細菌」に疑問の声

「砒素で生きる細菌」に疑問の声

以下は、記事の抜粋です。


NASAの研究者らが12月2日付けで『Science』に発表した「砒素で生きる細菌」について、他の研究者たちから、研究手法などの問題点を指摘する声が上がっている。

ブリティッシュ・コロンビア大学のRosie Redfield氏は、発見された砒素は、細胞の中ではなく、ゲルの中に存在していたものである可能性が考えられると指摘している。同氏は12月4日に、自身の研究ブログに批判を掲載している。

Redfield氏の指摘は、今回の研究では、DNAとRNAを他の生体分子から分離するゲル電気泳動と呼ばれる手法を行なう前や後に、DNAの適切な精製がされていないというものだ。

一方、ハーバード大学のAlex Bradley氏は、別の問題をブログ上で指摘している。水中では、砒素化合物はすみやかに分解する。もしDNAが本当に砒酸塩から作られていたのなら、水中で分解していたはずだと、Bradley氏は述べている。しかし実際はそうならなかった。このことは、DNA分子が互いをつなぎ合わせる材料として、より丈夫なリン酸塩を、依然として用いていた可能性を示唆するものだ。

『Slate.com』に掲載された研究の詳細な検証記事では、それ以外にも多くの問題点が指摘されている。

一方、『Nature』誌のAlla Katsnelson氏の同様の記事は、研究に用いられた細菌は、砒酸塩を食べて大きく膨らんでいるように見えるが、これは細菌が、単に有毒物質を封じ込めている可能性を示すものだと指摘している。

論文の著者たちは、少なくともメディア上では、これらの批判に答えていない。NASAの広報は、議論は科学誌上で行なわれるべきだと述べたが、NASAの研究者らが論文を発表する前に起こしたメディア上での騒ぎから考えると、この発言は不適切だ、とRedfield氏は指摘している。

主執筆者である米国地質調査所のRonald Oremland氏は、12月7日にワシントンDCのNASA本部で研究者たちに向けて話し、その様子は放映された。ブログ上での批判については、「実際に追試をしてもらうのが一番良い」とOremland氏は述べた。


私も、関連記事でScinenceの「砒素で生きる細菌」論文に対して批判的なことを書きましたが、アメリカでの反応は、この記事でもわかるように、もっとすごいようです。

Redfield氏とBradley氏の主張は、ほぼ上の記事に書かれているとおりですが、非常に面白いと思ったのは、これらの主張が科学雑誌ではなく、ブログに書かれていることです。さらに、Bradley氏のブログ記事にはRedfield氏のコメントがあって、以下のようなやりとりがありました。


6. Thanks, Alex, for providing the chemist’s view into the weaknesses of this paper. I’ve put the microbiological view (also finding many serious flaws) up at my blog, RRResearch. Click on my name below to see it. Posted by: Rosie Redfield | December 5, 2010 7:29 PM

7. Hi Rosie – thanks for your comment. I definitely encourage you all to go to her blog and read her detailed and thorough review! Posted by: Heather Olins | December 5, 2010 7:51 PM


今さらですが、日本の科学者のネット利用や意識がとんでもなく遅れているのを感じます。私の周辺でも、ブログを書くのを「止めとけ!」という上司(だと思っている人)はまだまだ多いようです。

さて、Slate.comの検証記事というのもすごくてそのタイトルは、”This Paper Should Not Have Been Published”です。時間のある方はご覧ください。

業界のルールでは、論文に掲載された生物材料はリクエストがあれば提供しないといけない筈ですので、その気になれば簡単に追試できるはずです。ニュースの続報を楽しみにしたいと思います。

これらの細菌は、砒素をDNAに利用しているのではなく、単に蓄積しているだけかもしれない。(WIRED NEWSより)

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