ゾウは「名前」を使うと判明、イルカやオウムと大きな差も…アフリカゾウの認知能力について新たな扉を開く発見、「ゾウ語」解読にもつながるか
以下は、記事の抜粋です。
2024年6月10日付けでプール氏らが学術誌「Nature Ecology and Evolution」に発表した新たな研究では、ゾウたちが、個体に固有の呼びかけ(名前)で互いを呼び合っている証拠が示されている。
名前で呼び合うのは、動物界では極めてめずらしい。しかも、オウムやイルカといった数少ない種でさえ、名前を呼ばれた側の個体が発した音を相手側がまねる方式だ。たとえばハンドウイルカは、自分に特有のホイッスル音を発し、ほかのイルカたちはその音を繰り返してその個体に呼びかける。ところが、ゾウがやっていることはどうやらそれとは異なる。彼らは相手の発する音や物理的特性とは何の関係もない「任意のラベル」を使うという。
任意のラベルとは、人間の言語でたとえるなら、ウシ科の動物を指して「ウシ」と呼びかけるようなものだ。この「ウシ」という言葉は、音としても物理的にも、その動物自体にはまったく似ていない。一方、科学者が「象徴的なラベル(アイコニックラベル)」と呼ぶより単純なラベルの場合、ウシ科の動物は「モー」と呼ばれることになる。これは彼らが発する音をまねたラベルだ。
任意のラベルを使えば、コミュニケーションの幅が広がり、抽象的な思考を表現する方法が手に入る。そしてこの理屈は、ゾウにも当てはまるだろう。
分析にあたり研究チームは、ケニアのサンブル国立保護区とバッファロー・スプリングス国立保護区で2019年から2022年にかけて録音されたものと、1980年代、1990年代、2000年代にアンボセリ国立公園で録音されたアーカイブ音源の両方を利用した。全体として、チームは101頭のアフリカゾウが、117頭の受け手側個体に向かって発した496回分の呼びかけのデータを分析した。
科学者らが特に焦点を当てたのは、姿が見えていない親族と接触を開始するとき、触れ合える距離にいるほかの個体に近づくとき、子育てをするときにゾウたちが使用する接触、挨拶、世話のゴロゴロ音だ。こうした音には名前が含まれている可能性が高いと研究者らは見込んでいた。
ゾウたちは、トランペットのような鳴き声や吠えるような声からゴロゴロ音まで、さまざまな声を発する。彼らの声の構造は複雑だ。たとえば、ゴロゴロというのは低周波の音で、その一部は人間の可聴域外にあり、さまざまに変動するだけでなく、地面を通して伝わり、0.5秒から12秒にわたって継続する。そこには多くの情報が含まれており、その解釈も難しい。
呼びかけの中に名前がどのように記号化されているのかはまだわかっていないが、研究は名前がそこに存在することを示唆している。データをコンピュータアルゴリズムに入力したところ、同じ発声個体から同じ受け手個体に向けられた複数の呼びかけは、同じ発声個体から別の受け手個体に向けられた呼びかけよりも似通っていることがわかった。
研究者らが行った新たな分析では、異なるゾウが同じ受け手に呼びかける際、同じ名前を使うかどうかについては、矛盾した結果が出ている。考えられる説明のひとつは、異なるゾウが同じ受け手に呼びかける際には、ニックネームのような名前の派生形が使われている、というものだ。
研究者らはフィールド実験も行い、研究対象のゾウに向けて複数の録音データを聞かせている。音声データの中には、もともとそのゾウに向けられたものと、同じ個体が別のゾウに向けたものとが含まれていた。これに対するゾウの反応は劇的だった。ゾウたちが自分の「名前」を確かに認識し、それに応答することが示された。
たとえば、ドナテラが彼女に向けられた呼びかけを聞いた際、彼女は「8回鳴き声を上げ、スピーカーに近づき、その背後を探した」という。一方、いとこのロスコに呼びかけたときの再生音声を聞いたときには、ドナテラはほとんど反応せず、1度だけ鳴き、スピーカーには近づかなかった。
元論文のタイトルは、”African elephants address one another with individually specific name-like calls(アフリカゾウは、互いに特定の名前のような鳴き声で呼び合う。)”です(論文をみる)。元記事には動画や音声もあるので、興味をもたれた方は元記事をご覧ください。
ゾウの行動と発声をすべて記録してAIに分析させれば、ゾウ語を翻訳できそうな気がするのですが、、、
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