まだ紫の「青いキク」

サントリーなど、世界初の「青いキク」開発 遺伝子組み換えで

以下は、記事の抜粋です。


サントリーホールディングスと農林水産省系の花き研究所は9月14日、世界で初めて青みがかったキクを開発したと発表した。遺伝子組み換え技術を使って赤いキクの色素の75%を青色に変えた。改良を進めていけば、完全な青いキクができるとみており、商品化を目指す。

キクには黄や白、赤色などがあるが、青色の色素を作るのに必要な酵素の遺伝子がなく、自然界に青いキクは存在しない。ほかの植物から取り出した青の色素を作る酵素の遺伝子を、赤の色素に組み込み、青みがかったキクを作った。

サントリーはこれまでにも青いカーネーションやバラを開発済み。青いカーネーションは国内外で年間約1800万本販売している(2008年度実績)。青いバラは09年中に商品化する予定。


独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 花き研究所のホームページにプレスリリースがありました(プレスリリースをみる)。

赤の色素(シアニジン型アントシアニン)と青の色素(デルフィニジン型アントシアニン)は、下の図にあるように、OH基が1つあるかないかだけの違いです。キクには、フラボノイド3’位水酸化酵素(F3’H)があり、赤色色素をつくれますが、フラボノイド3′,5’位水酸化酵素(F3’5’H)がないために、青色色素ができませんでした。

どちらの酵素も基質は同じですので、理論的には他の植物からクローニングしたF3’5’H遺伝子を赤いキクの花弁で発現させれば青い色素ができるはですが、キクの遺伝子組換え方法の開発や、発現プロモーターの選択、遺伝子ドナー植物の選択などの問題をクリアするのに、かなりの労力と時間がかかったようです。

結局、キクF3’H遺伝子の花弁特異的発現プロモーター配列を使い、カンパニュラ(フウリンソウ)のF3’5’H遺伝子を導入し、タバコの翻訳エンハンサー配列を組合わせた場合に、F3’5’H遺伝子が強く発現し、キクに含まれる赤色色素のうちの約75%が青色色素になり、赤紫色の花色が紫色の花色に変化したキクの作出に成功したそうです。

あと、F3’H遺伝子をノックアウトすれば、赤色色素ができなくなり、完全に青いキクができそうですが、今の時期に発表したのは、民主党政権による独立行政法人潰しを恐れてのことでしょうか?サントリーもキリンとの経営統合の話もあるので、今のうちにアウトプットを出しておく必要があったのかもしれません。

F3’5’H遺伝子や翻訳エンハンサーは異種の植物由来ですので、できた青いキクはLMO(遺伝子組換え生物)です。屋外で生育させる場合、生物の多様性に対する影響は、どうなるのでしょうか?

コメント

  1. KIi☆ より:

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    分子の話は難しくて苦手ですが、これはわかりやすかったので、理解が深まりました。
    バイオテクノロジー関係の仕事や植物医などを考えていた時期もあったぐらぃ植物が大好きなので、とても興味深い話でした。

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