エムポックスは性行為だけで広まる感染症ではない

「エムポックス」はどう広まる? WHOが「緊急事態」を宣言…旧称「サル痘」、2022年より致死率の高いウイルスが流行、子どもの感染や死亡が多い
以下は、記事の抜粋です。


コンゴ民主共和国では、2024年に入ってからの患者数が1万5600人以上にのぼり、537人が死亡している。ブルンジ、ケニア、ルワンダ、ウガンダなど、これまでエムポックスが確認されたことのない近隣諸国にも広がっている。WHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言した。

エムポックスとは何か?
エムポックスは最近まで「サル痘」と呼ばれていた。この病気を引き起こすエムポックスウイルスは天然痘と同じオルソポックスウイルス属のDNAウイルスだが、エムポックスは天然痘よりはるかに重症度が低く、感染力も弱い。

WHOによれば、エムポックスの症状の特徴は、発疹(水疱や膿疱となって痛みやかゆみを伴う)、リンパ節の腫れ、発熱だ。

エムポックスウイルスには「クレードI」と「クレードII」の2系統がある。現在の大流行を引き起こしているのはクレードIで、患者の10人に1人が死亡する。クレードIIは2022年に流行したもので、現在流行しているものに比べて致死率ははるかに低く、1%未満だ。

今回の大流行では、「クレードIb」という新しいサブクレードが出現したことが緊急事態宣言の動機となった。また、コンゴ民主共和国での感染者と死亡者の多くが15歳未満であることから、特に子どもが影響を受けやすいと考えられている。

エムポックスは人獣共通感染症であり、動物からヒトに感染する。1958年にデンマークの研究所にいたサルで初めて確認されたためサル痘と名づけられたが、実際の自然宿主はわかっておらず、アフリカの熱帯雨林に生息する小型哺乳類ではないかと考えられている。

ヒトへの感染が初めて確認されたのは1970年で、コンゴ民主共和国の男児が感染した。以来、ほとんどの感染はアフリカの西部と中央部で起きている。

エムポックスはどのように広がるのか?
どちらの系統のエムポックスも、ウイルスに感染した動物や、ウイルスに汚染されたもの(衣類、寝具、タオルなど)に直接触れることで感染する。

ウイルスに感染した人との濃厚接触によっても感染する。キス、会話によって飛び散る飛沫に触れたり吸い込んだりする、感染者の皮膚や口、性器にできた病変に直接触れるなどだ。

米疾病対策センター(CDC)によれば、潜伏期間は3〜17日で、エムポックスの症状がある人は、「発疹が完全に治癒し、新しい皮膚の層ができるまで」はほかの人に感染させてしまう可能性があるという。

エムポックスは性感染症?
2022年に流行した際は、男性と性交渉を行う男性の感染が圧倒的に多かった。公衆衛生当局にとって、このコミュニティーに汚名を着せることなく人々に情報を伝えるのは難しい課題だった。

しかし、エムポックスは性行為だけで広まる感染症ではないことを示す証拠があると、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のウイルス学者であるバーナード・モス氏は言う。症状が出ている人がいれば、皮膚どうしの接触(性行為を含む)や、ベッドシーツやタオルや衣服との接触によって広まるのだ。

実際、アフリカでの過去の集団感染では、あらゆる年齢層の女性や子どもや男性が感染している。「このウイルスは、1つの性別や1つの集団の中にとどまるものではありません」と、カリフォルニア大学のアン・リモイン氏は警告する。

検査は受けられる? ワクチンはある?
エムポックスの検査は受けられる。検体の採取は、病変の部位を綿棒でぬぐうだけだ。CDCは、エムポックスと思われる発疹がある場合のみ検査を受けるよう勧めている。

現在、WHOの予防接種に関する戦略的諮問委員会が推奨しているワクチンは3種類あり、いずれも本来は天然痘のワクチンだ。このうち、現在、世界では「MVA-BN(ジンネオス)」と「LC16」の2種類が使われている。

米国で使われているのはジンネオスで、4週間間隔で2回の接種が必要だ。米国保健福祉省は(感染した人との濃厚接触が疑われるなど)リスクが高い人に対して接種を奨励している。日本ではLC16が天然痘のワクチンとして承認されていたが、2022年にエムポックスの予防の効能が追加承認された。こちらは1回接種だ。

米保健福祉省によれば、すでにワクチン接種を完了している人や、以前にクレードIIのエムポックスに感染した人は、「クレードIのエムポックスに感染しても重症化しにくいことが期待される」という。しかし、ワクチンはエムポックスの流行地域であるアフリカの国々で足りていないという。


この記事をみると、「サル痘」と呼ばれた頃には、男性と性交渉を行う男性の感染が圧倒的に多かったので、それほど日本では感染は広がらないだろうと思っていましたが、キス、会話によって飛び散る飛沫に触れたり吸い込んだりする、感染者の皮膚や口、性器にできた病変に直接触れるなどでも感染するということですので、そうでもなさそうです。現在日本では、248例の症例が確認されている(2024年8月16日更新)だそうです。

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