【抗Xa剤「ダレキサバン】全世界で開発中止‐提携先見つからずアステラスが決断

【抗Xa剤「ダレキサバン】全世界で開発中止‐提携先見つからずアステラスが決断
以下は、記事の抜粋です。


アステラス製薬は9月28日、抗Xa阻害剤「ダレキサバン」について、全世界で開発を中止すると発表した。2月に術後静脈血栓塞栓症(VTE)予防の適応で国内申請を取り下げて以降、他社との提携による共同開発を最優先に検討してきたが、提携先を選定することが難しいと判断。全ての適応症で開発を中止することを決めた。

アステラスは、自社創製したダレキサバンを将来の大型製品と位置づけ、これまでVTE予防、心房細動(AF)患者を対象とした脳梗塞予防、急性冠症候群(ACS)患者を対象とした虚血性イベント予防の適応で、グローバル開発を進めてきたが、第III相試験以降の開発については、自社単独より他社との共同開発を模索してきた。

昨年9月には、VTE予防の適応で国内承認申請を行ったが、今年2月に医薬品医療機器総合機構(PMDA)から新たな追加試験を要求されたことから、国内申請を取り下げていた。

ダレキサバンの開発については、日本国内とアジアでVTEを対象とした第III相試験、AFを対象とした第II相試験、欧州でVTE、AF、ACSを対象とした第II相試験、米国でVTEを対象とした第II相試験を実施していた。


血液凝固では、まず何らかの原因で血小板が凝集して血小板血栓ができます。次に、多くの凝固因子が次々に反応してフィブリンができ、これが血小板血栓を覆ってフィブリン血栓ができます。活性化第10(Ⅹ)因子は、ビタミンKに依存して肝臓で生成されます。第Ⅹ因子は、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、コファクターなどによってXaに活性化されます。Xaは、プロトロンビンを2箇所で切断し、トロンビンを作ります。トロンビンは、フィブリノーゲンをフィブリンに変換します(下図)。

現在、血液凝固を抑制する経口薬として市販されているのは、ワルファリンなどのビタミンK依存性凝固因子合成阻害薬と最近登場した直接トロンビン阻害薬のダビガトラン(プラザキサ®)です。ビタミンK依存性薬は良く効きますが、効力の変動が激しく、凝固モニタリングが必要です。ダビガトランは、凝固モニタリングは不要ですが、半減期が短いことや、腎臓排泄型なので、腎機能が悪い場合は血中濃度が上がりすぎて重篤な出血をひきおこし易くなることなどの問題があります。

このような中、次世代の新規経口抗凝固薬のターゲットとして最も注目されているのがXaで、非常に多くの薬物が開発中です。上記のダレキサバン(YM150)、エドキサバン(DU-176b)の他にもrivaroxaban、LY517717、apixaban、betrixabanがあり、ブロックバスター候補薬として期待されています。

これらのXa阻害薬は、最初は短期のVTE予防の適応、次は長期のVTE治療、最後は心房細動のある患者での脳梗塞予防などの慢性疾患に対する適応をめざしています。上の記事にも書かれていますが、アステラス製薬は2月15日、VTE予防の適応での国内申請を取り下げたと発表しました。PMDAから要求された追加試験は、有効性や安全性に関連するものではないということでしたが、これが今回の開発中止に大きく影響したことは間違いないと思います。

以前の記事で書いたように、タケダ(TAK-442)は第2相で有効性が得られずXa阻害薬レースから早々と脱落しました。現在までのところ、rivaroxaban(Bayer)と apixaban(Pfizer、Bristol-Myers Squibb)が開発レースのトップを走っています。ダレキサバンは国産メーカー希望の星だったので残念です。

凝固系に働く薬物(井蛙内科開業医/診療録より)

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