ジェネリック医薬品クライシス

「沢井製薬、おまえもか!」ジェネリック医薬品クライシス
以下は、記事の抜粋です。


沢井製薬は、テプレノンカプセル50mgに関する安全性確認を巡って検査不正があったことを発表しました。平成22年の沢井製薬社内試験で、有効期限を超えた4年目の保存カプセルを使用した場合、十分にカプセルが溶けず、薬剤溶出が低下していることがわかりました。工場長が原因を明らかにするために薬の詰め替えを指示したところ、現場担当者はそれが正規の手法であると誤認したことがきっかけとなり、保存3年目のカプセルから内容を取り出して別カプセルに詰め替えて試験を行う、という承認外の手順で試験を進めることになってしまいました。

行政処分は未定ですが、これまでの他社の経緯を踏まえると、さらにジェネリック医薬品の流通懸念が起こることは間違いないと思われます。

日本の医薬品流通が崩壊する
普通のメーカーは、原材料や人件費高騰とともに商品を値上げすることが可能です。これはもう、資本主義の原点です。しかし、薬剤は国が薬価を決め、さらに年々下げてくるので、粗利を出す行為から逆行していることになります。

今回の問題になったテプレノンは1カプセルの薬価わずか6.3円です。うまい棒の半額くらいです。利益が出ない薬剤の供給責任を負わされるメーカーのストレスもかなりものだろうと、察するに余りあるところです。

COVID-19やインフルエンザの流行で不足しているとされている鎮咳薬や去痰薬については、厚労省は増産に向けた設備支援を行うことを検討していると報道されています。

ただ、医薬品の流通懸念はこれらの薬剤に限らず、全医薬品の約20%、ジェネリック医薬品の約30%が通常出荷されていない状況です。ジェネリック医薬品の品目数は増加し続けており、同一製造ラインで多品目の少量生産を行うことで、単一薬剤の製造能力に余裕がありません。そのため、ジェネリック医薬品メーカーが出荷制限・停止に陥っても、他メーカーがその穴を埋めることができず、限定出荷が連鎖的に起こる脆弱な構造になっています。

メーカーの設備投資への下支えは重要で、支援の裾野が広がることに期待したいです。実際のメーカーの現場は、「詰み」に近い状態にあり、「進むも地獄、退くも地獄」だと聞いています。


以前も書きましたが、ジェネリック医薬品の多くのメーカーは、低く設定された販売価格という条件の下で、調剤薬局への納入価格での価格競争を争っています。以前の小林化工の不正も一つの製造ラインを複数品目の製造に使用した結果でした。

先発医薬品を使うと医療費が高くなるので、政府がジェネリックを使うと医療機関の収入が増える仕組みを作った結果、あっという間に医療機関で処方される薬の大半はジェネリックになりました。ところが、今は記事のような状況のために、「ジェネリック可」の処方箋を書いても調剤薬局がジェネリックを調達できないために先発品が処方されるということが起こっています。

下の図は、「ジェネリック医薬品業界の現状と課題及び流通・薬価制度に関する提案」という2022年9月22日に日本ジェネリック製薬協会の高田 浩樹氏が発表した資料からとったものです(資料をみる)。特定の病気にしか使わない儲からない薬まで作ってくれている企業は3つだけです。これらの企業の経営が不安定で、先発企業も撤退したら、患者は生きる道を断たれます。

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