Breast-Cancer Adjuvant Therapy with Zoledronic Acid
以下は、論文要約の抜粋です。
背景:これまでのデータは、早期乳がん患者にビスホスホネート製剤を補助的に使用すると、再発および死亡率が減少することを示唆している。我々は、標準的な補助療法にゾレドロン酸を追加投与することで、これらの患者のアウトカムが改善するかどうかを調べる臨床試験を行った。
方法:本第3相非盲検試験においては、患者3,360例を、標準的な補助的全身療法にゾレドロン酸を併用する群と併用しない群とにランダムに割り付けた。ゾレドロン酸は3~4週ごとに6回投与し、その後は3~6ヶ月ごとに計5年間治療した。この試験の主要エンドポイントは無病生存率とした。2回目の中間解析で、事前に設定したベネフィット欠如の基準を超えていることが明らかとなった。
結果:追跡期間中央値59ヶ月の時点で、主要エンドポイントの無病生存率は各群77%で、群間で有意差は認められなかった。再発または死亡は、ゾレドロン酸群377例、コントロール群375例だった。死亡数もゾレドロン酸群243例、コントロール群276例と同程度であり、全生存率はゾレドロン酸群85.4%、対照群83.1%であった。ゾレドロン酸群では、確定した顎骨壊死17 例とその疑い9例が認められたが、コントロール群では認められなかった。他の有害作用の発生率は両群で同程度だった。
結論:これらの結果は、乳癌の補助的治療にゾレドロン酸をルーチンに使用することを支持しない。
2009年の関連記事で、高齢女性の骨粗鬆症を予防・治療するために飲んでいるビスホスホネート剤が、乳がんリスクを減らす可能性を示唆する発表を紹介しました。
1つは、アメリカの15万人以上の閉経後女性を調べた調査で、Fosamax (alendronate)というビスホスホネート剤を飲んでいる女性は、飲んでいない女性よりも侵襲性乳がんになる率が32%低かったという報告です。もう1つは、イスラエルでの調査で、ビスホスホネート剤を1年以上飲んでいる女性は、飲んでいない女性よりも乳がんリスクが29%減少するという結果でした。
しかし、エストロゲンが低い人は骨粗鬆症になりやすく、乳がんになりにくいことがわかっています。つまり、エストロゲンが交絡因子である可能性があります。これだと、エストロゲンが低い人がビスホスホネート剤を飲む可能性が高いだけで、ビスホスホネート剤に乳がん予防効果がない可能性が考えられました。
また、ビスホスホネート剤は、乳がんなどが骨転移した場合に、がんの進行を抑制する効果があることが知られていました。これらの結果に基づき、ビスホスホネート剤の抗乳がん作用は、かなり期待されていました。一方、他の関連記事のように、消化管系のがんは増加するという報告もあります。そこで、本論文のような臨床試験が行われたのだと思います。
残念ながら、結果はみごとにネガティブでした。この話は、これで決着だと思います。
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