合併症のない虫垂炎では抗生物質が外科手術の代替に
以下は、記事の抜粋です。
合併症のない虫垂炎患者では、抗生物質治療が虫垂切除と同程度に優れていることが示された。抗生物質による治療は、1889年以来いわゆる“ゴールドスタンダード”であった外科手術の安全な代替法であるという。
英ノッティンガム大学教授のDileep Lobo氏は、「合併症のない急性虫垂炎と診断された時点で抗生物質の投与を開始し、再評価を行えば、ほとんどの虫垂切除術を行う必要がなくなり、罹病率が低下する。また、患者の入院期間も短縮される可能性がある。穿孔や腹膜炎の徴候が明らかな患者では、早期の虫垂切除術がやはりゴールドスタンダードである」と述べている。
BMJ誌オンライン版に4月5日掲載された今回の研究で、Lobo氏らは、計900例の虫垂炎患者を外科手術または抗生物質に無作為に割り付けた4件の研究のメタ分析を実施した。その結果、抗生物質治療群では63%が1年後にそれ以上の治療を必要とせず、外科手術に比べて合併症が31%少なかった。
400例以上の抗生物質治療群の68例に再発症状が認められた。抗生物質投与群と外科手術群において、入院期間または合併症のある虫垂炎リスクに実際の差は認められなかった。
元論文のタイトルは、”Safety and efficacy of antibiotics compared with appendicectomy for treatment of uncomplicated acute appendicitis: meta-analysis of randomised controlled trials”です(論文をみる)。
メルクマニュアルの最新版の虫垂炎の項をみると、「急性虫垂炎の治療は開腹あるいは腹腔鏡による虫垂切除である」と書かれています。
抗生物質については、術前の静注による投与が推奨されています。第三世代セファロスポリンが適当であるとも書かれています。穿孔がない場合は術後の投与は不要だが、穿孔がある場合は白血球数が正常化するまで投与を継続すべきとしています。さらに、手術不能の場合でも、治癒までは行かないにしても抗生物質投与は生存率を著明に改善するとしています。
最近の外科手術の傾向として腹腔鏡を用いた手術も行われています。創が小さく、腹腔内の観察、洗浄がやり易い、術後の回復が早い、入院期間が短いなどの利点と手術時間が長く治療費が高いなどの欠点があります。
今後は、再発するリスクが約40%であることを受け入れた上で、穿孔や腹膜炎などの合併症がない場合は、急性虫垂炎を抗生物質投与のみで治療するという選択肢が生まれる可能性があると思います。何十年も前でしたが、私の友人のある外科医は、手術されるのが嫌で虫垂炎を何度も抗生物質でごまかしたと言ってました。
コメント
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「手術されるのが嫌で虫垂炎を何度も抗生物質でごまかしたと言ってました」——私の父は、「虫垂とて、現代医学では分かっていない何らかの役割があるかも知れない。創造主が与えたものを被造物が勝手に切除するのは浅はかかも知れないからダメだ」と言って、同じことをしていました。しかし、最終的には「虫垂炎を何度も抗生物質でごまかした」揚げ句、虫垂が癌化して落命しました。『医者は現場でどう考えるか』(© ジェローム・グループマン)は常にケースバイケースですね。