HER2陽性患者 トラスツズマブ+ドセタキセルにペルツズマブ併用で無増悪生存期間が有意に延長

HER2陽性患者 トラスツズマブ+ドセタキセルにペルツズマブ併用でPFSが有意に延長

以下は、記事の抜粋です。


HER2陽性転移乳がん(Metastatic Breast Cancer、MBC)患者に対する一次治療として、トラスツズマブ+ドセタキセルに、HERの二量体化阻害剤ペルツズマブを加えることによって、無増悪生存期間(PFS)が6.1ヶ月有意に延長することが明らかになった。第34回サンアントニオ乳癌シンポジウムで12月9日、MGHのJose Baselga氏が、国際多施設無作為化二重盲検プラセボ対照臨床第3相試験の結果を報告した。

ペルツズマブは、トラスツズマブと同様、抗HER2モノクローナル抗体だが、トラスツズマブとは結合部位が異なり、HER2のシグナル伝達に必須の2量体形成を阻害する。作用機序が異なることから、両剤の併用による効果増大が期待されていた。

試験では、HER2陽性MBCに対する一次治療として、トラスツズマブ+ドセタキセルに対し、ペルツズマブを追加投与することでの有効性と安全性を比較した。

2008年2月から2010年7月までに、25カ国204施設から登録した808例を、トラスツズマブ+ドセタキセルに加え、①プラセボ群406例②ペルツズマブ併用群402例に無作為に割り付けた。主要評価項目は独立評価委員会判定でのPFS。副次評価項目は、奏効率(ORR)、全生存期間、安全性などとした。

その結果、PFSは、プラセボ群の12.4ヶ月に対し、ペルツズマブ併用群は18.5ヶ月で、6.1ヶ月の有意な延長が認められた。内臓転移の有無を除き、事前に規定したサブグループのいずれにおいても、ペルツズマブのベネフィットが認められた。ORRはプラセボ群の69.3%に対して、ペルツズマブ群では80.2%で、ペルツズマブ群で良好な傾向が認められた。

ペルツズマブ群でプラセボ群よりも多く認められた有害事象は、下痢、ほてり、粘膜炎症、発熱性好中球減少、ドライスキンなどだった。ペルツズマブ併用群での心毒性の増加はみられなかった。

Beselga氏は「HER2陽性の進行乳がん、さらに言えば、進行乳がんにおいて、かつてない大きな効果が明確に示された」と述べ、「この新たなレジメンは、HER2陽性MBCに対する一次治療の実臨床を変えることになるだろう」と結んだ。


全乳がんの約20%に、HER2 (human epidermal growth factor receptor 2)とよばれる膜貫通型のチロシンキナーゼの遺伝子増幅 and/or 過剰発現が認められ、これによって進行性で予後不良の表現型を示します。

トラスツズマブは、HER2に対するヒト化モノクローナル抗体(zumab:超可変部以外をヒト型としたもの)で、HER2の細胞外ドメインに結合し、そのヒト化部分を認識したキラー細胞などによる抗体依存性細胞障害作用により、抗腫瘍作用を発揮します。HER2陽性乳がんに対して、トラスツズマブを化学療法に追加することでPFSや全生存期間が化学療法単独よりも大きく改善されました。しかし、それでも多くのHER2陽性MBCは進行が止まらないため、新しい治療薬の登場が切望されていました。

ペルツズマブは上記のように、HER2とは異なる細胞外部位に結合し、その2量体化を阻害します。これら2つのメカニズムの異なるモノクローナル抗体のあわせ技によって、HER2シグナルをより強力に阻害し、HER2陽性MBCを治療しようとするのが今回の臨床試験です。

この臨床試験は「クレオパトラ(CLinical Evaluation Of Pertuzumab And TRAstuzumab)」と名づけられています。根拠はありませんが、このようなネーミングができるアメリカはまだまだ強いと思いました。それにしても、ただでさえ高額なハーセプチンに別の抗体医薬を組み合わせたら、医療費はとんでもない額になりそうです。

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