メマンチン(メマリー®)は軽度アルツハイマー病には無効、中等度に対してもエビデンスが不十分

メマンチンは軽度アルツハイマー病には無効、中等度に対してもエビデンスが不十分

以下は、記事の抜粋です。


アルツハイマー病の処方薬であるメマンチン塩酸塩(日本商品名;メマリ―)は、軽度のアルツハイマー病患者には無効である可能性が、新しい研究によって示された。

同薬は、Mini-Mental State Examination(MMSE)におけるスコア16以下の中等度および重度のアルツハイマー病患者に対する適応が米国FDAにより承認されているが、軽度アルツハイマー病患者にも適応外で処方されることが多い。同薬はNMDA受容体拮抗薬の1つで、脳細胞のNMDA受容体と結合することにより、過剰になると重要な神経細胞を死滅させる神経伝達物質であるグルタミンの活動を遮断し、脳活動の異常を軽減するが、他剤と同様、疾患の治癒や進行の抑止は望めない。

米南カリフォルニア大学医学部教授のSchneider博士らは、メタ分析でメマンチン塩酸塩の軽度アルツハイマー病患者に対する有効性を検討。軽度アルツハイマー病患者計431例と中等度アルツハイマー病患者697例を含む3件の臨床試験を特定し、いくつかの測定法を用いて認知力や行動変化、正常に機能する能力を評価した。

結果、同薬またはプラセボを服用した軽度アルツハイマー病患者における効果に有意差は認められなかった。中等度の患者では、個別の研究では同薬とプラセボ使用に有意差は認められなかったが、3件の研究を統計学的に統合すると、有意な効果が認められた。

Schneider氏らは、それでも中等度アルツハイマー病患者におけるメマンチン塩酸塩の有効性のエビデンスは“不十分(meager)”であり、早期アルツハイマー病における同薬の単剤使用または他剤併用での有効性をさらに検討する前向き研究が必要であるとしている。研究結果は、医学誌「Archives of Neurology(神経学)」オンライン版に4月11日掲載された。


元記事のタイトルは、”Lack of Evidence for the Efficacy of Memantine in Mild Alzheimer Disease”です(論文をみる)。

メマンチンは、それ単独で、またはAChE阻害薬と併用して、中等症以上のアルツハイマー型認知症に対して有効だとされ、FDAは2003年に承認しました。

しかし、現在FDAが承認している認知症治療薬(4つのChE阻害薬とメマンチン)について行われた59の臨床試験についての96の報告をまとめた2008年の総説では、AChE阻害薬もメマンチンも認知機能と全般的臨床症状を有意に改善したが、それらの効果は非常に小さいと結論しています。

また、ガランタミンあるいはメマンチンがドネペジルよりも優れた臨床効果があるというエビデンスはなく、ドネペジルとメマンチンを併用した方がドネペジル単独よりも優れているというエビデンスもまだありません。

厚労省の薬事・食品衛生審議会薬事分科会は昨年12月24日、アルツハイマー型認知症の治療薬として、軽度~中等度の患者向けの「レミニール®」(ガランタミン)と、中等度以上の患者向けの「メマリー®」(メマンチン)の承認を決め、今年の3月から使用できるようになりました。

NMDA受容体拮抗というこれまでのAChE阻害とはちがう作用メカニズムをもつメマンチンに期待している臨床医はけっこう多いと思いますが、上の論文や総説をみると、8年前から使われているアメリカでのデータはあまり芳しいものではないようです。

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