致死率30%超で薬剤耐性も、真菌カンジダ・アウリスが世界で拡大

致死率30%超で薬剤耐性も、真菌カンジダ・アウリスが世界で拡大
以下は、記事の抜粋です。


カンジダ・アウリス(Candida auris)は新種の真菌として2009年に帝京大学の槇村教授らによって初めて報告された。東京都内のある女性患者の耳から見つかったものだ。2016年、米国としては初めての感染例がニューヨークの病院で発生。以来カンジダ・アウリスは米国の28の州と首都ワシントンD.C.で見つかっている。

米国では2022年に2300人超がカンジダ・アウリスに感染しており、米疾病対策センター(CDC)はカンジダ・アウリスが「恐るべき勢いで」広がっていると警鐘を鳴らす。

初期の研究では、カンジダ・アウリスは気候変動に伴う世界的な気温の上昇に適応することによって、人間の体内で生き延びられるよう進化した可能性が示唆されている。

カンジダ・アウリスとは?
真菌感染症のなかには、水虫のようにありふれたものもある。それに比べるとカンジダ・アウリスの感染例は少なく、また発症する部位も多くの場合、体内だ。そして血液の中で増殖したり、傷口を化膿させたりする。免疫機能が低下している人は感染のリスクが高い。また、点滴などを伴う治療を定期的に受けている人も、医療器具を介して感染するリスクが高い。

「ジムで感染することも、子どもたちが学校で感染することもありません。しかし、病気などがあって頻繁に医療機関に行く必要がある人は気を付けるべきでしょう」とテキサス大学のルイス・オストロスキー氏は言う。

カンジダ・アウリスが厄介なのは、菌を検出するのが難しい上、治療はさらに困難だからだ。感染の有無を調べる一般的な血液検査では、カンジダ・アウリスを検出できる確率は50%ほどだ。比較的規模が大きく、研究機関も併設しているような病院や大学であれば、血液中の真菌の遺伝子を調べる検査を行えるが、こうした検査は一般の病院ではほとんど行われていない。

たとえカンジダ・アウリスを検出できたとしても、多くの場合、今ある抗真菌薬が効かない。しかもその胞子は人間の体外のさまざまな物の表面に付着して何週間も生き延びられる。つまり、カンジダ・アウリスを体内から排除できたとしても、再感染の危険は残るということだ。日本型は今のところ抗真菌薬への感受性が高く、大規模な院内感染などは問題になっていないが、CDCはカンジダ・アウリス感染症を発症した人の30~60%が死亡したと推定している。ただし、その多くが感染以前に何らかの疾患を抱えていたという。

近年カンジダ・アウリス感染症が急増したのは、新型コロナウイルス感染症のまん延で医療スタッフや医療用品が不足し、病院によっては防護具などを繰り返し使用しなければならなかったケースがあったからだろうと、オストロスキー氏は考えている。

地球温暖化によって生まれる新たな真菌
人間の体温は通常、真菌が生き延びるには高すぎる。しかし、気候変動によって平均気温が上昇し、猛烈な熱波が頻発することで、真菌も高温の環境に適応し、人間の体内でも生き延びられるように進化した可能性がある。これが、カンジダ・アウリスが突然出現した理由として、科学者たちが唱えている説だ。

ジョンズ・ホプキンス大学のアルトゥーロ・カサデバル氏は、「カンジダ・アウリスは気候変動によって出現した最初の病原真菌かもしれないと考えています」と言う。科学者たちは長い間、気候変動によって気象パターンが変わり、気温が劇的に上昇することで新しい感染症が生まれる可能性があると警告してきた。


カンジダ・アウリスは、ウイルスでもなくバクテリア(細菌)と異なり、我々の細胞と同じように核やゴルジ体や小胞体を持つ真菌とよばれる真核細胞生物です。そのため、真菌だけを殺してヒトに無害な薬物の開発は難しく、特異的に効果のあるワクチンの開発は極めて困難です。予防するワクチンのないカンジダ・アウリスのような真菌感染が日本でも広まれば、再び医療が崩壊する可能性が高いです。

培養したカンジダ・アウリス(Candida auris)の入ったシャーレを手にする研究者。日本で最初に確認された病原体は今、世界中に広がっている。

 

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