以下は、記事の抜粋です。
ミツバチの幼虫を女王バチへと育てるたんぱく質を、富山県立大の鎌倉昌樹講師が特定した。驚異的な産卵能力を持つ女王バチは海外から輸入している養蜂家も多いため、女王バチを人工的に大量生産することで、養蜂に生かせる可能性がある。4月24日付のネイチャー電子版に掲載された。
ミツバチの女王バチと働きバチは同じ遺伝子だが、ローヤルゼリーをエサとして育てられた幼虫だけが女王バチになる。働きバチのエサは蜜や花粉。その働きバチが分泌するローヤルゼリーのどの成分が決め手となっているのかは謎だった。
鎌倉講師は、40度で30日間保存したローヤルゼリーではどの幼虫も働きバチになることを見つけた。新鮮なローヤルゼリーとの成分組成の違いを調べ、女王バチへ誘導するたんぱく質「ロイヤラクチン」を発見した。
これを幼虫に与えると、働きバチに比べ体が1.5倍程度に大きくなったり、卵巣が発達したりして女王バチの特徴を示した。ショウジョウバエに与えると体が2倍近くに成長。遺伝子として組み込んでも同様の効果があったという。
元論文のタイトルは、”Royalactin induces queen differentiation in honeybees”です(論文をみる)。論文のアブストラクトには以下のように書かれています。” Here I show that a 57-kDa protein in royal jelly, previously designated as royalactin, induces the differentiation of honeybee larvae into queens.” Contributionのところにも以下のように書かれています。”M.K. designed the research and performed the experiments. M.K. wrote the paper.”
Natureの実験系articleで著者が1人というのは珍しいと思います。研究室のHPをみると、同じ研究室に教授と准教授がいるようですが、論文ではまったくコメントされていません。医学系ではまだまだ関連記事に書いたような「オナラリーオーサー」が横行しているのですが、富山県立大にはその様な悪習は残っていないようです。
働きバチと同じ遺伝子を持つ幼虫がロイヤルゼリーによって女王バチに分化することは、100年以上前から知られていたそうですが、ロイヤルゼリー中の何が重要かは神秘のベールに包まれていました。
鎌倉さんは、コツコツと実験を重ねてロイヤラクチンを発見しただけでなく、ロイヤラクチンが女王のいないショウジョウバエにも効果があることを発見しました。さらに、遺伝学やRNAiというショウジョウバエの実験系を駆使して、上皮成長因子受容体(EGFR)やp70 S6キナーゼなどがロイヤラクチンの下流で働くことを明らかにしました。本当に素晴らしい研究だと思います。
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