新型コロナウイルス感染症検査の使い分けの考え方
新型コロナウイルスの検査法には、核酸検査、抗原検査、抗体検査があり、それぞれにサンプルの採取部位が異なるいろいろな方法があります。日本臨床検査医学会は、8月27日にその使い方の指針を発表しました。以下は、その抜粋です(下線と太字はブログ著者による)。
【検査法について】
COVID-19 診断に関連する検査として、核酸検査、抗原検査、抗体検査がある。
核酸検査(PCR)は、最も検出感度が高く、広く利用されている。パンデミックの当初から利用され、国際的にも標準的な検査方法として利用されている。
抗原検査には、簡易キットによる定性検査(エスプライン SARS-CoV-2)と、化学発光酵素免疫測定法による定量検査(ルミパルス SARS-CoV-2 Ag)があり、後者は専用の測定機器を用いて測定する。
一般的に抗原検査よりも核酸検査の方が少ないウイルスを検出できる。簡易キットによる抗原定性検査は、ある程度のウイルス量がないと検出できず、疑い症例で判定が陰性であった場合には、確認のために核酸検査が必要である。一方、抗原定量検査は、核酸検査の検出感度には及ばないものの、簡易キットよりも検出感度が高められている。厚生労働省は、この抗原定量検査を鼻咽頭ならびに唾液を材料として、無症状者にも広げて利用できることとした。
抗体検査は、現時点では検査についての正確な情報は限られており、いくつかのメーカーから
の製品があるが、その特性に一定の見解を述べられる状況にない 。実際に、診断ならびに診療
方針のために広く利用されている状況になく、今後のより詳細な情報の把握が必要である。
【検査材料について】
採取される材料として、鼻咽頭ぬぐい、唾液、喀痰を含む下気道検体がある。
鼻咽頭ぬぐいは、核酸検査ならびに抗原検査に利用される。標準的に採取され、検査に利用さ
れる。採取時に感染リスクが伴うため、個人防護具や採取ブースの確保、採取技術の教育などの準備が必要である。
唾液は、核酸検査ならびに抗原検査の検体として利用される。鼻咽頭ぬぐいと比較して、検
体採取時の医療従事者等の感染リスクや、検査対象者の侵襲を減らす面でメリットがある。一方で、COVID-19 患者唾液中のウイルス量は、鼻咽頭よりも少ないという報告もある。
喀痰や下気道吸引液も検査材料として採取される。下気道病変を伴う場合には、これらの検体
でのウイルス量は多いことが知られている。抗原検査の検査材料としては認められていない。
【検査の使い分けについて】
以下のように、有症状者と、無症状者とに分けて考えることができる。
有症状者で COVID-19 の診断を目的とする場合は、鼻咽頭ぬぐいを材料として核酸検査を行うことが最も検出感度の面で優れる。しかしながら、随時核酸検査ができる体制はほとんどなく、休日や夜間に臨床的な判断が必要な場合には、対応の遅れにつながる場合がある。一方、抗原検査は迅速性に優れ、治療や感染制御上の対応などを早期に開始できる利点がある。そのため、鼻咽頭ぬぐいの抗原検査を優先して行い、疑ったにもかかわらず抗原検査が陰性の場合には必要に応じて核酸検査の結果も含めて総合的に診断を行うこともできる。唾液を材料とする場合は、ウイルス量が多い場合には核酸検査と抗原定量検査のいずれも陽性となることが期待されるが、ウイルス量が少ない場合には陰性となる可能性に注意が必要である。なお、唾液による検査は、発症から 10 日目以降では検出感度が低下するため推奨されない。
簡易キットによる抗原定性検査は、有症状者での鼻咽頭検体のみを検査材料とすべきで、陰性の場合には核酸検査での確認の必要性を考慮する。無症状者でより確実に COVID-19 と診断することが求められる場合は、鼻咽頭ぬぐいが最も材料として適する。ただし、無症状者を対象に検査する場面では、比較的多くの人数を対象とすることも想定される。そのため、唾液を検査材料とすることで検体採取面での負担が軽減できるケースがある。
注意すべき点として、無症状者では比較的ウイルス量が少ないと想定されることから、唾液と鼻咽頭検体また唾液検体での核酸検査と抗原定量検査について結果に乖離が出る可能性がある。濃厚接触者のスクリーニングなど、偽陰性を減らすことが優先される場合には、核酸検査を行うか、鼻咽頭ぬぐいでの検査が推奨される。
無症状者を対象としては簡易キットによる抗原定性検査は推奨されない。
関連記事に紹介しましたが、大阪市大が無症状の学生・教職員を対象に抗原検査を実施しようとしているのは、明らかに誤りです。学会の指針発表の方が先です。
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