ロルカセリン、Qnexa®、Contrave®―FDA申請中の新規抗肥満薬の現状について

【抗肥満薬「ロルカセリン」】FDAが追加データ要求
以下は、記事の抜粋です。


エーザイと米アリーナ・ファーマシューティカルズは、米FDAの諮問委員会が承認不支持の見解を示していた抗肥満薬「ロルカセリン」について、FDAから審査完了報告通知を受領したと発表した。

事実上、現行申請内容では承認しないとの通知で、FDAはさらにラットの癌原性試験に関する安全性データと現在進行中の2型糖尿病を持つ肥満症・過体重患者を対象とした臨床試験の最終報告を提出するよう求めた。今後、エーザイとアリーナは、FDAと協議を進めながら、通知の指摘事項に対応していく考え。

ロルカセリンは、アリーナが創製し、エーザイが導入した新規抗肥満薬。アリーナが昨年12月に米国申請していたが、FDAの諮問委員会で、ロルカセリンの承認不支持が採択され、FDAの最終決定が待たれていた。審査完了報告通知は、新薬承認申請の審査期間が終了した時点で、承認に至らない場合に発行されるもの。


ロルカセリンは、視床下部のセロトニン5-HT2c受容体を刺激して、食欲や代謝を調節するといわれています。また、ランダム化された大規模な臨床試験でも弱いですが有効な抗肥満作用が認められました(関連記事1をみる)。

しかし、FDAの諮問委員会は、承認を勧めませんでした。ラットを用いた動物実験で乳がんの発生リスクが指摘されたことと、体重減少効果が弱いことがその理由のようです(関連記事2をみる)。

10月28日、FDAは別の抗肥満薬Qnexa®に対しても審査完了報告通知を出しました。Qnexaは、フェンテルミン(phentermine)とトピラマート(topiramate)の合剤です。

フェンテルミンは、、日本で唯一承認されている食欲抑制薬マジンドール(Mazindol、商品名:サノレックス)と同様、構造的にも薬理学的にも覚せい剤(アンフェタミン類)と類似しており、習慣性とともに心機能に対する重大な副作用が報告されています。しかし、FDAの承認は既に受けています。

トピラマート(商品名:トピナ)は、日本でも市販されている抗てんかん薬です。体重減少がその副作用の一つで、抗肥満薬としてはメリットになります。その他の副作用としては、眠気などがありますが、アンフェタミン類との併用で抑制されるようです。

このようにQnexaは、既に市販されている薬物の低用量混合品ですが、フェンテルミンは同様のアイディアで問題を引き起こしたFen-Phen(fenfluramineとの合剤)の成分であるため、そして認められると何百万人というたくさんの人が使用する可能性があり、副作用発現の可能性も高いため、効果はあるが安全性に問題があるとして今回は承認されませんでした。

ロルカセリンとQnexaの評価を比べると、Qnexaの方には臨床試験の追加が要求されなかったことから、Qnexaを開発したVivus社は楽観的な見通しを持っており、今回のFDAの判定後も株価は下がらなかったそうです。

もう一つの新薬Contrave®は、ナルトレキソン(naltrexone)とブプロピオン(bupropion)の合剤です。Contraveについては、関連記事3で紹介しました。今年の12月にFDAの審査結果が出る予定です。

FDAは、今年の10月に先発の抗肥満薬Sibutramine (Meridia®) を心血管リスク増加のために市場から撤退させました。このような状況をみるとFDAが抗肥満薬を承認するハードルはかなり高そうです。

一方、アメリカの肥満人口は急速に増加し、ニーズも高まっています。製薬会社としては、市場の大きさを考えると少々危険でも新薬を開発しないわけには行かないのでしょう。

いずれにしても、依存性や心血管リスクなどを考えると、一般人が軽度の肥満を解消する目的で気軽に飲む薬ではないと思います。

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