アタキシン2ポリグルタミン鎖の中程度伸張は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のリスクを高める

Ataxin-2 intermediate-length polyglutamine expansions are associated with increased risk for ALS

以下は、論文の要約です。


重篤な神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因については、TDP-43とよばれるタンパク質が重要な役割を果していることが示唆されているが、そのメカニズムは不明である。

研究者らは、ポリグルタミン(polyQ)タンパク質の1つであり、脊髄小脳失調症2型において変異していることが知られているアタキシン2 (ATXN2)が、動物においてもモデル生物においても、TDP-43による細胞毒性の強力な制御因子であることを示した。

ATXN2とTDP-43はRNA依存的に複合体を形成する。ALS患者の脊髄神経細胞において、ATXN2は局在異常を示す。同様に、脊髄小脳失調症2型患者において、TDP-43は局在異常を示す。

ATXN2のALSにおける関与を調べるため、研究者らは915人のALS患者において、ATXN2遺伝子でのpolyQ鎖の長さを調べた。その結果、ATXN2 polyQ鎖の中程度の伸張(27-33グルタミン)が有意にALSと関連していた。

これらの結果は、ATXN2が普遍的なALS感受性遺伝子であることを示している。さらに、ALSや他のTDP-43関連疾患において、TDP-43–ATXN2相互作用が治療の分子標的として有望である可能性を示唆している。


TDP-43(TAR DNA-binding protein of 43 kDa)は、heterogeneous nuclear ribonucleoprotein (hnRNP)の一つで、414アミノ酸からなります。
N末側にRNP-1とRNP-2という2つのRNA認識モチーフ(RRM)があり、C末側にglycine-richドメインがあります(下図参照)。RRMを介してRNAのUGリピートに、glycine-richドメインを介して他のRNA結合蛋白と結合し、蛋白質複合体を形成することによってスプライシング抑制作用を示すことが知られています。

TDP-43は、全身の臓器に広くに発現し、正常細胞では核内に局在します。しかし、2006年、前頭側頭葉変性症(FTLD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の変性部位に出現するユビキチン陽性封入体の構成タンパク質であることが報告され、神経変性疾患における関与が注目されました。

研究者らは、TDP-43を酵母細胞内で強制発現し、その毒性を強める遺伝子の1つとしてPbp1を発見しました。Pbp1がアタキシン2のホモログであったことが今回の発見につながったようです。

ショウジョウバエでの遺伝学的研究や、ALS患者でのコホート研究を含む研究のスケールの大きさに驚きました。また、第一著者に相当する研究者が4人もいる(contributed equally)のにも驚きました。

論文の主張が正しいとすると、アタキシン2のポリグルタミン伸張は確かにリスク因子ですが、TDP-43のRNAとの結合を阻害しても、TDP-43とアタキシン2との相互作用を阻害しても、神経変性疾患の発症は抑制できそうです。研究の進展に期待しましょう。

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