NK-1(サブスタンスP)受容体拮抗薬、アプレピタント:がん化学療法に伴う悪心・嘔吐の予防と治療

吐き気・嘔吐でがん治療を中断させない!制吐薬の適正使用ガイドラインまとまる

以下は、がんナビの記事の抜粋です。


抗がん剤の副作用として生じる吐き気や嘔吐を抑えるために使われる新しい制吐薬が、相次いで登場している。これらの制吐薬は、どんなメカニズムで効くのだろうか。

わが国で現在、がん治療に使用できる制吐薬は、その作用機序により3種類に分類することができる。副腎皮質ステロイド(デキサメタゾン)、5-HT3受容体拮抗薬、ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬だ。

急性および遅発性の吐き気・嘔吐は、抗がん剤による消化管の刺激が、サブスタンスPとセロトニンという2種類の物質に仲介され、脳内にある吐き気・嘔吐の中枢を刺激することにより生じていることが分かってきた。そこでセロトニンの作用を阻害する5HT3受容体拮抗薬、サブスタンスPの作用を阻害するNK1受容体拮抗薬が制吐薬として開発された。

初のNK1受容体拮抗薬となるアプレピタントは昨年12月に発売された。アプレピタントは、急性だけでなく遅発性の吐き気・嘔吐の予防効果もあることが確認されている。一方、5HT3受容体拮抗薬は、急性の吐き気・嘔吐の予防効果が確認されているが、2010年4月に発売されたパロノセトロンは、長時間効果が持続することから、遅発性の吐き気・嘔吐の予防効果も期待されている。


アプレピタントは、小野薬品が発売し(商品名:イメンドカプセル)、開発名がONO-7436でしたので、小野薬品が創った薬かと思いましたが、そうではありませんでした。米国Merk社の開発で、最初の本格的な臨床試験の結果は1999年のNEJMに掲載されています(論文をみる)。

アプレピタントは、 2003年にFDAが承認した最初のNK1受容体拮抗薬です。海外では既にがん化学療法に伴う悪心、嘔吐(chemotherapy-induced nausea and vomiting (CINV))の予防薬として60カ国以上で認可されています。経口カプセル剤のほか、プロドラッグ注射剤であるEMEND (fosaprepitant dimeglumine) が承認されています。単独使用ではなく、5HT3受容体拮抗薬やステロイドとの併用が原則です(下図参照)。

CINVはがんの化学療法において最もつらい副作用だと言われています。化学療法を受ける患者の75%近くが嘔吐を経験するとも言われています。

化学療法薬が投与されるとセロトニンが消化管から遊離します。消化管や中枢神経系のセロトニン受容体は、初期のCINVの発生に重要だと考えられています。

サブスタンスPも化学療法薬によって感覚神経などから遊離します。サブスタンスPは嘔吐反射にも関与しており、末梢や中枢のNK受容体に結合します。中枢NK-1受容体は、嘔吐伝達経路において最も重要な受容体だと考えられています。

記事にも書かれていますが、長時間作用型5HT3受容体拮抗薬であるパロノセトロンとともに、アプレピタントは、これまでの薬物が効きにくかったCINVの遅延相(delayed phase、化学療法薬投与後24時間以降)に対する効果が期待されています。2つ目のCINVに対するNK1受容体拮抗薬、カソピタント(casopitant)も開発中です。

なかなか良さそうな薬ですが、CYP3A4によって代謝されるので、ドセタキセルなどとの薬物相互作用に注意する必要があります。

催吐リスクに応じた制吐薬の使い方

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