Dasatinib versus Imatinib in Newly Diagnosed Chronic-Phase Chronic Myeloid Leukemia
Nilotinib versus Imatinib for Newly Diagnosed Chronic Myeloid Leukemia
ダサチニブとニロチニブは、新しいBCR-ABLキナーゼ阻害薬です。まとめて紹介します。
ダサチニブ(Dasatinib)の論文
背景
イマチニブによる治療に失敗した慢性期の慢性骨髄性白血病(CML)の患者において、非常に強力なBCR-ABLキナーゼ阻害薬であるダサチニブによる治療は、完全な細胞遺伝学的反応と増悪しない生存をもたらす可能性が高いとされている。今回は、CMLの初回治療におけるダサチニブの効果をイマチニブと比較した。
方法と結果
新しく診断された慢性期のCML患者519名を対象に、ダサチニブとイマチニブの有効性を無作為化試験で比較。12カ月後、細胞遺伝学的完全寛解率・分子生物学的寛解率はダサチニブ群77%・46%、イマチニブ群66%・28%だった。
結論
ダサチニブは、完全な細胞遺伝学的反応と分子生物学的が得られる率が高く、反応までのスピードも速かった。新しくCMLと診断された患者においてもダサチニブを使用することで、長期予後も改善すると思われる。
ニロチニブ(Nilotinib)の論文
背景
ニロチニブは、イマチニブよりも強力なBCR-ABL阻害薬であることが示されている。研究者らは、慢性期にあるフィラデルフィア染色体陽性のCMLと診断された患者において、ニロチニブの効果と安全性をイマチニブと比較した。
方法と結果
慢性期のフィラデルフィア染色体陽性CML患者846名を対象に、BCR-ABL阻害剤ニロチニブおよびイマチニブの有効性を第3相非盲検ランダム化多施設試験で比較。患者は1:1:1に分けられ、それぞれ、ニロチニブ300mg群および400mg群(各1日2回)、イマチニブ400mg(1日1回)が投与された。12カ月目の分子生物学的寛解率はニロチニブ300mg群および400mg群(各1日2回)で44%、43%であり、イマチニブ群22%と比べ約2倍だった。
結論
新しく慢性期のフィラデルフィア染色体陽性CMLであると診断された患者に対して、ニロチニブによる治療はイマチニブのものよりも優れていた。
結論は簡単ですが、なぜダサチニブとニロチニブはイマチニブよりも良く効くのでしょうか?ニロチニブについては、イマチニブよりも20倍強力(1/20の濃度で効く)ということで理解できますが、ダサチニブについては、「より汚い(dirtier)」からということのようです。以下のコメンタリーに説明があります。
Novel Therapies for Cancer: Why Dirty Might Be Better
参考記事にも書きましたが、がん細胞のDNAには非常に多くの変異があり、単一のキナーゼ活性の抑制だけで増殖が抑えられるとは考えられないというのが、このFojo氏のコメンタリーの主旨です。
確かに、ダサチニブは、イマチニブよりもdirtier、つまり、より多くの種類のキナーゼを阻害します。また、特異的だと信じられているイマチニブニもBCR-ABLだけではなく、複数のキナーゼを阻害します(論文をみる)。
精神科的な薬物についても、特定の分子に特異的な薬物よりもdirtyな薬物が良く効くといわれ始めています(記事をみる)。もちろん、dirtyな薬物は副作用も多い可能性が高いので、注意が必要です。
これまで「より選択的、より特異的な薬物が優れている。」と教条的に教えてきた薬理学の講義について、もう一度考える必要があるようです。
参考記事
1個人(51歳白人男性)の肺がん組織と正常組織の全ゲノム配列比較
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