サルのエボラウイルス感染症にsiRNAによる治療が有効:致死量ウィルス曝露後でも回復

Postexposure protection of non-human primates against a lethal Ebola virus challenge with RNA interference: a proof-of-concept study

以下は、論文要約の抜粋です。


背景:研究者らはこれまで、モルモットを用いて、ザイール・エボラウィルス(ZEBOV)のRNAポリメラーゼLを標的としたsiRNA治療実験を行ってきた。siRNAを致死量のZEBOVに曝露後すぐに、siRNAをstable nucleic acid-lipid particles (SNALPs、核酸-脂質安定微粒子)の形状で投与することで死亡を完全に防ぐことに成功していた。

このようなげっ歯類のZEBOV感染モデルは、治療法のスクリーニングには有効であるが、ヒトでの効果予測には不十分である。そこで今回は、サルに致死量のZEBOVを曝露させ、siRNAの効果を調べた。

方法:ZEBOV Lポリメラーゼ、ウィルスタンパク質VP24とVP35を標的とする3種混合siRNAをSNALPsにして投与した。第1のグループ(3匹)では、ZEBOVに曝露後30分、1、3、5日後の計4回、siRNAを2mg/kg静脈注射した。第2のグループ(4匹)では、曝露後30分、1、2、3、4、5、6日後の計7回、siRNAを静脈注射した。

結果:siRNAを4回投与したサル3匹中2匹、7回投与したサル全てで死亡を防いだ。siRNAによると思われる副作用は、ほとんど認められなかった。

考察:サルにおいてZEBOV曝露後にsiRNAを投与して、完全に死亡を防げたことはZEBOVによって生じる出血熱に対して有効な治療モデルを提供する。これらのデータは、RNA干渉治療がエボラウィルスに感染した人々に対して効果的であることを示している。さらに、siRNAを用いた治療戦略が、他の振興感染症に対しても有効であることを示唆している。


エボラウイルスは、RNAウイルスで、1976年に発見され、ウイルスが発見された村の近くを流れていたザイール川の支流の川の名前をとって名付けられたそうです。発生源、自然界における宿主はまだ不明です。

極めて恐ろしい感染症と考えられているようですが、血液、分泌液、精液、臓器との個人的濃厚接触以外での感染リスクは低いと考えられています。十分な医薬品があり、医療機器の利用も可能で、また検疫機能が働いていれば、過去における大流行も直ちに制圧されたはずだそうです。

しかし、感染すると出血傾向を示し、重篤な臓器不全をきたして死亡する可能性が高くなります。

siRNAは、細胞レベルの実験ではよく用いられていますが、ヒト感染症モデルとしてのサルでの実験は、これまでに2例(肝炎とSARS)しかないそうです。また、これまでの実験ではsiRNAによる非特異的な免疫賦活作用の影響を否定できていないそうです。

本研究は、ヒト致死的感染症モデルで、感染後に投与したsiRNAの効果を調べた最初の実験です。siRNAを投与されたサルでは、ウィルス血中濃度も低下したことが確認されました。

理論的には、siRNAはあらゆる種類の感染症に応用可能です。siRNAを投与すれば、致死量のウィルスに曝露した後でも救命出来るのは素晴らしいと思います。

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