Denosumab(抗RANKL完全ヒトモノクローナル抗体)が欧米で骨粗鬆症の治療薬として承認。

ECが閉経後の骨粗鬆症と前立腺癌のホルモン遮断療法による骨量減少の治療薬としてdenosumabを承認
以下は、記事の抜粋です。


Amgen社は5月28日、閉経後女性の骨粗鬆症ならびに前立腺癌患者のホルモン遮断療法による骨量減少により、骨折のリスクが上昇した場合の治療薬として、denosumab(商品名:Prolia)の製造販売を欧州委員会(EC)が承認したと発表した。Denosumabは欧州連合の27の全加盟国、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインで承認され、同剤では世界初の承認となった。

DenosumabはRANKL(NF-κB活性化受容体リガンド)に特異的に結合する完全ヒトモノクローナル抗体。破骨細胞の本質的なレギュレータであるRANKLに結合し、破骨細胞による骨破壊を抑制する。

今回の承認は6件のフェーズ3試験のデータに基づく。いずれの試験でも、denosumabの投与により、測定した全部位の骨密度の上昇が認められた。うち2件の試験では、骨粗鬆症と前立腺癌の患者における骨折が評価項目とされ、denosumab 60mgを6カ月毎に単回皮下注射することで、骨折の発生率が低下したことが明らかになった。

閉経後の骨粗鬆症の女性患者7808人を対象としたFREEDOM試験では、denosumabを投与した群とプラセボを投与した群を比較し、36カ月の時点で新たに脊椎骨折が発生する相対的リスクはdenosumab群で68%低下し、さらに股関節骨折では40%、非脊椎骨折では20%低下した。
一方、非転移性前立腺癌でアンドロゲン遮断療法施行中の男性患者1468人を対象としたHALT試験では、36カ月の時点で新たに脊椎骨折が発生する相対的リスクはdenosumab群で62%低下した。

Denosumabの投与で多くみられた有害反応は、尿路感染症、上気道感染症、坐骨神経痛、白内障などで、最も重篤な有害反応は蜂巣織炎を主とする皮膚感染症であった。

重篤な皮膚感染症の発生率は、閉経後の骨粗鬆症の研究ではdenosumab群0.4%、プラセボ群0.1%であったが、乳癌と前立腺癌の研究では両群で同等(各0.6%)だった。


ECだけではなく、アメリカのFDAも6月1日、denosumabの閉経後女性の骨粗鬆症に対する使用を承認しました(記事をみる)。denosumabは、ドル箱だったエリスロポエチン製剤の特許切れのため、次のブロックバスターとしてAmgenが最も期待する薬です。

NF-κB活性化受容体リガンド(RANKL: receptor activator of NF-κB ligand)は、TNFリガンドファミリーに属する膜結合型サイトカインで、骨芽細胞などが発現するタンパク質です。RANKL の受容体(RANK: NF-κB活性化受容体)は、破骨細胞前駆細胞上に存在しており、骨芽細胞と破骨細胞前駆細胞がコンタクトすることにより、RANKLとRANKが結合し、TRAF6(TNF receptorassociated factor6)を介する情報伝達経路が活性化された結果、前駆細胞が破骨細胞へと分化します(下の図を参照)。

denosumabは、RANKLに結合するモノクローナル抗体で、RANK/RANKLの結合を阻害します。上記記事のように、閉経後骨粗鬆症や骨転移を伴う悪性腫瘍に対する効果が期待されています。さらに海外では関節リウマチ(RA)で臨床試験が進行中で、関節破壊抑制効果が期待されています。ただし、炎症そのものは抑制しないとされています。

現在の骨粗鬆症治療のゴールデンスタンダードは、アレンドロネートなどの強力な骨吸収抑制作用を示すビスホスホネート類です。ビスホスホネート市場では、アレンドロネートのジェネリックと投与頻度の少ない新薬の登場が予想されています。

高齢者への投与が多いことを考えると、半年に1回の皮下注射で有効であることはかなりのメリットだと思われます。ただ、ビスホスホネートも月1回とか年1回のものが出てくるので、それだけでは勝てないと思います。副作用とコストの勝負になりそうです。

参考記事
骨粗鬆症の治療薬、ビスホスホネート剤が乳がんリスクも減らす!?
ビスホスホネート(骨粗鬆症治療薬)の作用メカニズムについて

Bone Remodeling – RANKL Pathway

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