慢性C型肝炎ウイルス感染治療に希望をあたえる最初の特異的作用薬:プロテアーゼ阻害薬

First Specific Drugs Raise Hopes for Hepatitis C

以下は。記事の抜粋です。


慢性C型肝炎ウイルス感染は、感染後何十年も経った後で、肝硬変や肝がんをおこすことがある恐ろしい感染症だが、アメリカとヨーロッパでは特効薬が近日中に認可される見通しだ。

NS3-4Aというウイルスの酵素を標的とする「プロテアーゼ阻害薬」は、70-80%の患者の慢性C型肝炎を治癒させ、現在の非特異的な標準治療がせいぜい半分の患者にしか有効でないのに比べると、格段の進歩が期待される。今はまだ2種類の薬(telaprevirとboceprevir)しか知られていないが、今後は多くのメーカーから続々と出て来る予定だ。しかし、これらには副作用や高コスト(患者一人あたり約170万円)などの問題がある。また、多くの製薬メーカーがC型肝炎市場に参入した理由の1つは患者数が多いからだが、患者は急激に減少しているのでメーカーは市場導入を急ぐ必要がある。

これらの薬の使用方法は、標準療法であるペグインターフェロンαとリバビリンの組み合わせに追加することだが、できれば患者の負担が大きい標準療法への追加投与ではなく、2-3の特異的薬物を組み合わせて使うことが薬物耐性の出現などを考えると望ましい。プロテアーゼ阻害薬以外の特異的な薬物の候補としては、ウイルスのポリメラーゼ阻害薬やシクロフィリンA阻害薬などで、これらとの組み合わせがうまく行けば治癒率はさらに向上するだろう。

C型肝炎にはもう1つ重要な問題がある。それは、感染者の多くが自身の感染に気づかないことである。これはアメリカなどの先進国でも問題だが、発展途上国ではもっと大きな問題である。「薬物コストもこれらの国々では問題だが、それを論じる前に気づかない感染者からの感染が広まることを阻止する必要がある。」とWHO本部で肝炎対策ユニットを立ち上げたSteven Wiersmaは言う。


最近、ボセプレビル(boceprevir)のことを書いたばかりですが、本記事ではC型肝炎治療についての現状と展望が良くまとめられているので紹介しました。

印象に残ったのは、先進諸国ではC型肝炎が急激に減っているということです。ウイルスの混入している血液が体内に侵入しない限り感染しないので、日常生活での感染はほとんど無く、現在の患者は衛生状態の良くなかった時代の医療行為による感染によるものが大半です。性感染や母子感染も報告はあるものの、実際は極めてまれとされています。ということで、各製薬メーカーは、この急激に縮小する市場をお互いの間の競争と時間との競争の両方を強いられているそうです。

発展途上国では、キャリアによる感染拡大が問題が大きく、新薬が高コストであることよりも深刻であるというのも印象に残りました。B型と異なり、C型肝炎に関してはまだワクチンは開発されていません。製薬メーカーの意向とは違うかもしれませんが、これらの国での感染を抑制するのに最も有効なのはワクチン開発だと思います。

A hidden problem. WHO estimates that 170 million people are chronically infected with hepatitis C, most of them without knowing it.(Scienceより)

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