メトホルミンでコントロール不良の2型糖尿病には、リラグルチドがシタグリプチンよりも有効

ビクトーザがジャヌビアより優れた有効性-ノボノルディスク
以下は、記事の抜粋です。


デンマークのノボノルディスク社はこのほど、同社のGLP-1受容体作動薬ビクトーザ(一般名:リラグルチド)と米メルク社のDPP-4 阻害薬ジャヌビア(一般名:シタグリプチン)との比較試験の結果、ビクトーザ投与群の方がジャヌビア群よりも優れたHbA1c値、空腹時血糖値、体重の低下を示したことが、Lancetのオンライン版に掲載されたと発表した。

また、ビクトーザ群では、米国糖尿病学会(ADA)の治療目標値のHbA1c値7.0%未満を達成した患者が有意に多く、ジャヌビア群の約2倍だった(ビクトーザ1.2mg群44%・1.8mg群56%、ジャヌビア群22%)。

試験は、ビグアナイド系のメトホルミン投与だけでは血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者665人を対象に、北米と欧州で実施。メトホルミンに追加して、ビクトーザ(1日1回1.2mgまたは1.8mg)、ジャヌビア(同100mg)を26週間投与し、有効性と安全性を比較した。

試験結果によると、HbA1c値は、ビクトーザ1.2mg群で1.24%、1.8mg群で1.50%、ジャヌビア群で0.90%減少。空腹時血糖値は、ビクトーザ1.2mg群で33.7mg/dl、1.8mg群で38.5mg/dl、ジャヌビア群で15mg/dl低下した。また体重は、ビクトーザ1.2mg群で2.86kg、1.8mg群で3.38kg、ジャヌビア群で0.96kg減少した。

このほか安全性の面では、投与初期の吐き気の発症率はビクトーザの方が高く、1.2mg群の21%、1.8mg群の27%に対し、ジャヌビア群で5%だった。


元論文のタイトルは、”Liraglutide versus sitagliptin for patients with type 2 diabetes who did not have adequate glycaemic control with metformin: a 26-week, randomised, parallel-group, open-label trial.”です(論文の要約をみる)。

GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬は、インスリンの分泌を改善する薬物です。インスリン分泌による低血糖は、SU薬などでは一番気になる副作用ですが、本研究では、どちらの投与群でも軽微なものが約5%の患者にみとめられただけです。これは、インクレチンによるインスリン分泌促進はグルコース依存性で、血糖値が低いときにはインスリン分泌を促進しないためだと思われます。

DPP-4で分解されるインクレチン(GIPとGLP-1)は、受容体に結合するとβ細胞内のcAMP濃度を上昇させます。これがcAMP依存性リン酸化酵素(PKA)と低分子量GTP結合タンパク質Rap1のGEF(グアニンヌクレオチド交換因子)であるEpac2を活性化し、グルコースによるインスリン分泌を促進します。

従来から糖尿病治療に使われているトルブタミドなどのSU薬は、Epac2とATP感受性カリウムイオン(KATP)チャネルの両方を活性化して、インスリン分泌を促進します。また、SU薬には低血糖に加えて、体重増加作用もありますが、逆にGLP-1は、中枢作用により食欲を抑制し、体重を減少させる作用があります。本研究でもそのように報告されています。

その他インクレチンには、膵β細胞に対する抗アポトーシス作用や、増殖促進作用などが示されています。

インクレチンを治療に用いる場合の問題は、短い半減期(GLP-1は2分以下)です。そこで、DPP4によって分解されにくいGLP-1誘導体と、内因性のGLP-1の作用を高めるDPP-4阻害薬が開発され、臨床に用いられています。以下に、本論文で用いられた2つの薬物を紹介します。

リラグルチド(Liraglutide)は、GLP-1のアミノ酸を一部置換するとともに脂肪酸を付加したGLP-1誘導体(下図)で、血中アルブミンと結合してDPP4による分解に抵抗性となり、最高血中濃度到達時間は9~12時間、半減期は13時間と長いです。日本では現在、臨床第Ⅲ相試験が進行中です。ペプチドなので経口投与できず、インスリンのように皮下注射する必要があります。

一方、DPP4阻害薬のシタグリプチン(sitagliptin)は、経口投与が可能です。しかし、インクレチンの活性を高めるだけでなく、サブスタンスPなどの生理活性ペプチドの分解にも関与するため、鼻汁、そう痒感、頭痛、咽頭痛などの副作用が生じる可能性があります。こちらは、既に国内発売されています。

本論文は、ノボノルディスク社のサポートで行われた研究ですが、少なくともメトホルミンでコントロール不良の2型糖尿病には、リラグルチドの方がシタグリプチンよりもよく効くことをはっきりと示しました。ただ、DPP-4阻害薬でもSU薬と併用した場合、低血糖による副作用が発生した症例がありますので、効果が弱いわけではないと思います。ビジネスとしてどちらが勝つか、おもしろい勝負だと思います。

関連記事
糖尿病治療薬「DPP-4阻害薬」が、日本で初めて発売
糖尿病の新薬は、「2010年問題」に対応できるか?

GLP-1とリラグルチドの構造

コメント

タイトルとURLをコピーしました