カンジダ・オーリス(Candida auris)というカビ(真菌)による感染症が「世界的に流行」する恐れアリ

日本で報告された病原菌による感染症が「世界的に流行」する恐れアリ
以下は、記事の抜粋です。


「カンジダ・オーリス」(Candida auris)と呼ばれる真菌(空気中を漂うカビ)が引き起こす、深刻な感染症が世界的に広がりつつある。

A Mysterious Infection, Spanning the Globe in a Climate of Secrecy (Published 2019)
The rise of Candida auris embodies a serious and growing public health threat: drug-resistant germs.

上記記事によれば、これまで米国では587名の患者が報告されており、他にも英国やスペイン、ベネズエラをはじめ各国で感染者が出ているという。

この病原菌は複数の医薬品(抗菌剤)に対して耐性を持つため、医療関係者や科学者らが危機感を募らせている。

C. aurisが日本で発見された当初、この真菌は強い毒性も抗菌薬に対する耐性も示さなかった。しかし、その後、世界各国で感染が広がる過程で、そうした凶悪な性質を育んでいったようだ。

米CDCによれば、C. auris全体の90%は少なくとも1種類、同30%は2種類以上の抗菌薬に対する耐性を備えているという。

これに感染し易いのは高齢者、あるいは何らかの病気などのせいで免疫力の低下した人たちだ。さらには免疫系が未だ十分に発達していない新生児も、感染の危険性があるという。病気が発症すると、高熱や体の痛み、だるさを訴えるが、症状が悪化すると死に至ることもあるようだ。

C. aurisは繁殖力が非常に強く、2015年、これに感染した患者が入院していたロンドンの病院では、「エアロゾル(微粒子)化した過酸化水素」を噴霧する最先端の除去装置を使っても、この病原菌を(患者がいた)病室から完全に除去することができなかったという。

これと共に気になるのは、こうした病院やそれが位置する地方自治体等が感染者が出たことを公表したがらないことだ。その理由は悪評が立つのを恐れることと、パニックを回避するためと見られる。このように公表を怠ると、むしろ感染拡大の危険性が高まるとも見られている。

もしも上記のような状況が放置されれば、2050年には(C. aurisのような)感染症による死亡者数は世界全体で年間1000万人に達し、癌による死亡者数(2050年に推定で年間800万人)を上回ると予測する調査結果もあるという。


関連記事によると、5-FCやキャンディン系の抗真菌薬には感受性があるようです。また、最近では遺伝子診断法も開発されたようですので、それほど怖がる必要はないと思います。

記事にも「これまでにスペインの病院で報告されたケースでは、カンジダ・オーリスに感染した患者の41%が30日以内に死亡したと見られるが、病院側の発表によれば、必ずしも、この感染症のためではないという。何故なら、患者らは元々他にも病気を抱えていたため、真の死因を識別し難いためだ。」と書かれているように、C. aurisに感染するヒトの多くは非常に免疫力が低下している場合がほとんどなので、死亡率が高いからといって、即ち危険な強毒菌だとはいえません。

しかし、真菌(カビ)は細菌(バクテリア)とは異なり、我々の細胞と同じような細胞の構造、例えば細胞核、小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリアなど、を持っているので、我々の細胞には害がなく真菌を殺すような特異的治療薬の開発はかなり困難です。そのため、使える抗真菌薬の種類は抗細菌薬と比べると圧倒的に少ないです。がんが治る病気になって、ヒトがもっと高齢まで生存するようになった時、真菌は本当の脅威になる可能性があります。

 

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