南アフリカから見つかった新規変異株「オミクロン株」 現時点で分かっていること

南アフリカから見つかった新規変異株「オミクロン株」 現時点で分かっていること
毎度おなじみの忽那氏の解説です。以下は抜粋です。


南アフリカ共和国から新たな変異株が見つかり、11月26日にWHOはこれをオミクロン株として「懸念される変異株」に位置づけました。現時点で分かっていることをまとめました。

「オミクロン株」は2021年11月11日にボツワナで採取された検体から初めて検出されました。南アフリカで11月14日以降に採取されたサンプルからも検出されています。南アフリカの中でも特にハウテン州という地域で多くの症例が見つかっており、11月12日から20日までの間に検査された77例全てがこのオミクロン株による感染者であることが分かりました。ハウテン州では、現在検査されている検体の半数以上がオミクロン株であることから、南アフリカの保健省はすでにハウテン州ではこのオミクロン株が主流になっていると推定しています。この地域はこれまではデルタ株が広がっていた地域であり、デルタ株から置き換わって広がっていることから、オミクロン株はデルタ株よりも感染力が強い可能性が指摘されています。

南アフリカ共和国における変異株の検出される割合の推移

オミクロン株はすでにアフリカ以外でも見つかっています。香港では2例のオミクロン株による感染者が報告されています。1例は2回のワクチン接種歴があり、10月下旬から11月にかけて南アフリカへの渡航歴があり無症状であったとのことです。もう1例は2回のワクチン接種歴があるカナダからの帰国者であり、前述の南アフリカからの症例と同じ検疫隔離用ホテルの向かいの部屋に滞在していたとのことです。このカナダからの帰国者は、南アフリカからの帰国者の症例がサージカルマスクを着用せずにホテルの部屋のドアを開けた際に感染したのではないか、とのことです。またイスラエルでもマラウィからの渡航者であった1例の確定例と2例の疑い例が報告されています。ベルギーからは、エジプトに渡航歴のあるワクチン未接種者からオミクロン株が見つかった、と報告されています。

このように、すでにオミクロン株が見つかっている南アフリカやボツワナ以外にもマラウィやエジプトからの渡航者からもオミクロン株の感染者が見つかっていることから、このオミクロン株はすでにアフリカの他の国々にも広がっている可能性があります。

オミクロン株についてはまだ十分に分かっていないことが多いのが現状です。

南アフリカ共和国の一部の地域でデルタ株から置き換わっているということからはデルタ株よりもさらに感染性が強くなっている可能性がありますが、南アフリカ共和国では感染者のうち新型コロナウイルスの遺伝子配列まで調べられている割合は一部であることから、特定のクラスターに偏っている可能性もあり、現時点では「デルタ株よりも感染力が強いか」を結論づけることはできません。

スパイク蛋白には32もの変異が見つかっており、このうちH655Y、N679K、P681Hという3つの変異はスパイク蛋白2箇所の開裂部位(S1/S2)の近くの変異であることから、感染力の増加に関わっている可能性があります。

重症度への影響は?現在のところ、オミクロン株による感染者において特に重症度が高くなっているという報告はありません。南アフリカからの報告によると、オミクロン株の感染者で特に特徴的な症状というものはなく、無症状の人もいるとのことです。

ワクチン接種や再感染への影響は?オミクロン株は、30を超える変異を持ち、これまでの約2年間の新型コロナウイルスの流行の中で、最も分岐した変異株です。このため、ワクチンの効果を低下させ、再感染のリスクを高める可能性が懸念されています。

実際にこれまでにワクチン接種者でも感染例が報告されていますが、ワクチン接種による感染予防効果は時間とともに低下しますので、この報告だけでオミクロン株のワクチンへの影響を推し量ることはできません。

スパイク蛋白に起こっている変異のうちのいくつかはこれまでの変異株でも報告されており、ワクチンの有効性低下や再感染に関連していると考えられています。オミクロン株は、さらに多くの変異がスパイク蛋白にあることから、ワクチンの有効性に大きな影響を与えるのではないかと懸念されています。しかし、実際にこの変異株がワクチンの効果やブレイクスルー感染にどの程度の影響を与えるかを評価するには、さらなるウイルス学的調査やワクチン効果を検証する研究が必要です。

一般的に、これまでの変異株では感染予防効果は落ちますが、重症化を防ぐ効果は保たれています。ワクチン接種が新型コロナの感染対策として重要であることには変わりありません。

以上のように、オミクロン株についてはまだ分かっていないことが多く、現時点ではどれくらいの脅威であるのか判断することは難しい状況です。しかし、デルタ株からオミクロン株に置き換わっている地域があることは大きな懸念であり、水際対策を強化し日本国内への侵入をできる限り阻止・遅延させる必要があります。

日本政府は南アフリカ、ナミビア、ジンバブエ、ボツワナ、レソト、エスワティニのアフリカ南部6カ国からの入国者や帰国者に対する水際対策を強化することを発表しました。しかし、前述の通り、すでにオミクロン株はこれらの国以外のアフリカ諸国でも広がっている可能性があり、より広範囲の国に対する水際対策の強化が望まれます。

また、2021年11月26日時点で日本国内のゲノムサーベイランスではオミクロン株は検出されていないとのことですが、引き続きゲノムサーベイランスで検疫・国内での監視を行う必要があります。


岩田健太郎氏が以前から言い続けていることですが、日本は「水際作戦」にこだわりすぎて、それが失敗したときのプランBがなかった事が、これまで大きく感染が広がった原因だったと思います。オミクロン株だけではなく、理論的にはどんな変異があったとしてもファイザーやモデルナのmRNAワクチンは約100日で対抗可能だと考えられます(記事をみる)。オミクロンでもこれまでと同じように水際作戦が失敗することも想定し、「たとえ、オミクロン株が国内に侵入した場合でも、最小の流行で抑え込む」作戦を立てておいて欲しいです。忽那さん、よろしくお願いします。

それにしても、デルタからオミクロンまですごく多くの変異株があったということでしょうか?以下の表からわかるように、オミクロンはアルファベットの後半です。

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