脳卒中予防のアスピリン、健康な高齢者ではむしろリスク増

脳卒中予防のアスピリン、健康な高齢者ではむしろリスク増
以下は、記事の抜粋です。


低用量アスピリンは脳卒中の予防に広く用いられているが、高齢者においては脳卒中の有意な減少は認められず、むしろ頭蓋内出血が有意に増加したという結果が示された。

この報告は、高齢者における低用量アスピリンのリスクとベネフィットのバランスを検討した無作為化二重盲検プラセボ対照試験Aspirin in Reducing Events in the Elderly(ASPREE)の2次解析の結果である。参加者は米国とオーストラリア在住の心血管疾患の既往のない70歳以上の高齢者。追跡期間中央値は4.7(3.6~5.7)年。

本試験における主要評価項目は、無障害生存期間(身体障害および認知症のない生存期間と定義)で、アスピリン群とプラセボ群で差はなかったことがすでに報告されている。今回報告された脳卒中および出血性イベントはあらかじめ設定された副次評価項目。

主な結果は以下のとおり。

・1万9,114例が登録され、女性1万782例(56.4%)、年齢中央値74(71.6~77.7)歳がアスピリン投与群(毎日100mg・9,525例)とプラセボ群(9,589例)に1対1で割り付けられた。
・脳卒中を含む頭蓋内イベントの発生率は低く、追跡期間1,000人年あたり5.8人であった。
・虚血性脳卒中は、アスピリン群146例(1.5%)、プラセボ群166例(1.7%)で発生し、両群のリスクに統計学的有意差はなかった。
・出血性脳卒中は、アスピリン群49例(0.5%)、プラセボ群は37例(0.4%)で発生し、こちらも有意差は見られなかった。
・出血性脳卒中を含む頭蓋内出血の合計は、アスピリン群はプラセボ群より有意に増加していた(108例[1.1%]vs.79例[0.8%]、HR:1.38)。

研究者らは「低用量アスピリンの連日投与による虚血性脳卒中の有意な減少は認められない一方で、頭蓋内出血は有意に増加していた。これらの所見は、転倒などで頭蓋内出血を発症しやすい高齢者に対しては、アスピリン使用にとくに配慮する必要があることを示すものだ」としている。


元論文のタイトルは、”Low-Dose Aspirin and the Risk of Stroke and Intracerebral Bleeding in Healthy Older People,Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial(健康な高齢者における低用量アスピリンと脳卒中および脳内出血のリスク…無作為臨床試験の二次解析)”です(論文をみる)。

「脳梗塞や心筋梗塞を患った人がアスピリンを服用すると(二次予防)、脳梗塞・心筋梗塞の再発予防効果のメリットが脳出血などのデメリット(副作用)を上回ることが数々の研究で確認されています。一方、こうした病気をしたことがない基本的に健康な人がアスピリンを服用すると(一次予防)、確かに脳梗塞・心筋梗塞は減りますが脳出血も増えてしまうため、このメリットとデメリットを天秤にかける必要があります。」と言われてきました(記事をみる)。

しかし、この論文によれば、脳梗塞(虚血性脳卒中)はアスピリン服用で減らないようですので、どちらにしても健康な高齢者が心血管系の病気の1次予防のためにアスピリンを服用するメリットはデメリットよりも小さそうです。

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