カルシニューリン阻害薬を使わないエベロリムスベースの免疫抑制療法、新規腎移植患者における臨床試験

Everolimus-based, calcineurin-inhibitor-free regimen in recipients of de-novo kidney transplants: an open-label, randomised, controlled trial

以下は、論文要約の抜粋です。


背景:腎移植において、腎毒性のない安全な免疫抑制治療戦略は、達成できていない。安全性と効力を維持したまま移植腎機能を最適化するために、カルシニューリン阻害薬を減らしたmTOR阻害薬エベロリムスベースの免疫抑制療法を検討した。

方法:シクロスポリンベースの初期治療を行った新規腎移植患者300人を対象に、カルシニューリン阻害薬を含まないエベロリムスベースの免疫抑制療法(トラフ濃度[6—10 ng/mL]、ミコフェノール酸モフェチルと副腎皮質ステロイドを併用)を、標準的なシクロスポリンベースの療法と無作為化試験で比較した。移植から12カ月後の糸球体濾過量(GFR)で見た腎機能検査を主要目的とした。

所見:腎移植後12ヶ月ではエベロリムス群の76%とシクロスポリン群の81%が治療を完了した。この時点での腎機能(GFR)をみるとエベロリムス群は71·8 mL/分/1·73m2、シクロスポリン群は61·9 mL/分/1·73m2で、エベロリムス群が有意に優れていた。バイオプシーにより調べた拒絶反応率は両群とも15%だった。

結論:エベロリムスベースの免疫抑制作用に基づく早期のカルシニューリン阻害薬離脱は効力と安全性を維持しながら12ヵ月後の腎機能を改善した。以上の結果から、選択された患者におけるこの治療戦略は長期予後を改善するかもしれない。


以前、肝臓移植の専門家にラパマイシンのことを聞いた時には、「肝臓移植では、カルシニューリン阻害薬以外は使い物にならない。」という答でした。それで、この論文のタイトルをみた時は少し驚いたのですが、読んでみて以下のように納得しました。

カルシニューリン阻害薬は、様々な臓器移植で広く用いられていますが、最も重大な副作用は急性および慢性の腎毒性です。そのため、腎移植においては、カルシニューリン阻害薬をできるだけ使わないで拒絶反応を抑制する安全な治療法の開発が強く望まれています。本論文は、エベロリムスを用いた方法を紹介しています。

特に腎移植の場合は、カルシニューリン阻害薬を用いると上記のような腎毒性のために長期予後が良くないことが知られています。一方、初めからエベロリムスのようなラパマイシン系の薬を用いると腎毒性はないのですが、免疫抑制作用が弱いために拒絶反応がおこりやすいことや、細胞増殖抑制作用のために創傷治癒が悪いことが報告されています。2種類の薬物を同時に使用することも試されましたが、やはり腎毒性の問題があるようです。

そこで本試験では、腎移植直後4.5ヶ月間はシクロスポリンを使用し、その後はシクロスポリンをエベロリムスに全面変更する療法を試しています。シクロスポリンを投与し続ける治療法と比べて、同等の安全性と免疫抑制効果が得られながらも腎機能が改善したと報告されています。

最初の4.5ヶ月はシクロスポリン(カルシニューリン阻害薬)を使うので、完全な”calcineurin-inhibitor-free regimen”とは言えないと思うのですが、細かいことは言わずに改善の努力を評価してあげましょう。

上記論文は2月21日のThe Lancetに掲載されています。おそらく、これを受けて以下のようなプレスリリースが2月25日にノバルティスからありました。
「サーティカン®」効能追加の承認申請腎移植における拒絶反応の抑制

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